domsub書きたいとこ「教えてや」
イコさんのCommandにSubである俺が逆らえる訳が無い。言いたくない、言いたくない、と言う思いとは裏腹に、口からは自然と言葉が流れていく。
「イコさん、は」
英語で言うんはなんや恥ずかしいわ、と言うイコさんの主張により日本語で行われる命令は、しっかりと俺を支配する。
「俺が嫌がること絶対にせん」
今しとるけど、と思った言葉は出ていかない。今教えろ、とイコさんに言われているのは、『イコさんの好きなところ』だから、文句が漏れ出ることは無い。
イコさんはベッドのヘッドボードに背中を預けて座っている。そんなイコさん開かれた足の間にぺたんと座っている俺が、せめてもとイコさんから目を逸らそうとしても、イコさんにはCommandがある。
「こっち見てや」
そう言われてしまえば、イコさんから目は逸らせない。深緑色の目が俺の全部を見透かしているみたいで、恥ずかしさからカッカッと顔が燃え盛るようだった。
イコさんの手が、俺のcollarが着けられた首を撫でる。
「戦っとる時の表情がかっこいいところ」
墓場まで持っていくようなことを言わされている。イコさんの好きなところ言うとか、そういうのは海とかの役目で俺の役目じゃない。イコさんが求めてるのが、単なる賞賛じゃなくて、恋人があげる好きなところというのは分かっているけど、そう思わざるを得ない。
だって考えてみても欲しい。俺はそういうの絶対に口に出さなそうな性格をしている。はい、はい、って適当に流して終わり。そういう立ち回りが出来る人間のはずなのだ。
首を撫でていた手が耳に移動して、耳の裏を優しく撫でる。犬や猫を撫でるようなそれは、存外気持ちがいい。
「俺の好きなもんいっぱい作って食べさせてくれる」
全部、全部、ついに測定不能の四文字ではなく、Subの三文字が書かれた紙がいけない。あの紙がずっと来なければ、俺はイコさんの隣でイコさんのしたいことを頭使ってさせてやれる、優秀な年下の気が使えるやつでいられた。
後ろ髪を両手を使ってワシャワシャとかき混ぜられる。前に公園にいた犬がこういう風に撫でられているのを見たことがある。
「絶対に俺を否定せんでいてくれる」
ああ、でもこの考えも、Subの尽くしたいっていうのに当てはまるんだったか。頭がふわふわとしてきて思考がまとまらなくなってくる。
イコさんの親指が、俺の唇を押してくる。
「俺の事見てくれる目が好き」
恥ずかしくて堪らないのに、Subとしての支配されたいという欲求が満たされていって、嬉しくて幸せな気持ちが溢れていく。
イコさんの目が俺の目を見る。バチリ、そんな音がしたみたいに視線がかち合う。
「嫌いなとこなんて、ない」
幸せ、嬉しい、そんな言葉だけが頭の中で渦巻く。
「もうええで」
イコさんのその言葉で、次に言うことをふわふわとして言葉が浮かばない脳みそから探し出そうとしていたのをやめる。目も、もう逸らしていい。それなのにどうにもイコさんの目から逸らせない。俺を見てくれている目を見ていたいと思ってしまう。
「スペース入ってまったな」
スペース。空間。空白。辞書に書かれていた和訳が、頭の中に浮かんで消えた。何も考えられない頭ではイコさんの言葉をただ聞き流すことしか出来ない。