追憶の勿忘草久しぶりに山から降りて街並みを歩けば、知っている景色との若干の差異がことさらに目を引いた。
住民が増えて居心地の悪さを感じて去った頃より、更に賑やかになっている気もしてやはり来なければよかったかもしれない、と早々に後悔が胸に生まれる。
雑踏の中の喧騒、人混みに満ちる、強すぎるほど強い生き物と命の気配。
山の静けさとは正反対のそれに目眩にも似たものを感じる。まるで一気に歳をとったようにどっと疲れが押し寄せてきた。
細い路地裏に入って、建物に懐くように寄りかかる。翼が邪魔だが仕方ない。
自力で立てないほどではないが、気疲れは思ったより大きかった。
用がなければ山を降りることはない。そして山に住むようになってから、用は作らないようにして世俗と関わらずに生きてきた。
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