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    riru_sfmd

    @riru_sfmd
    オベぐだ♀のR-18とワンクッションの必要なSSを置いています。ほぼ完結した作品の初出ですが、たまに書きかけと再録もあります。
    https://lit.link/rirusfmd(pixivと通販ページ一覧)

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    riru_sfmd

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    転生現パロ。再会したふたりが、新しい朝にお互いの想いを確かめ合う話。
    鯖ぐだ♀オンリーのふたつの企画を合わせています。

    #オベぐだ♀
    #オベロン
    oberon
    #ぐだ子
    stupidChild

    Happily Ever After(オベぐだ♀/事後&ごはん企画)「――――」
     眼を開けると、手が、指先が伸ばされるところだった。無論、私に向かって。
     ぼやけた視界でもわかる、異形の左手。ではなく、ひとの右手だった。私と、同じ。
     全然、平気なのに。怖くなんて、ないのに。
    「――――」
     薄く開いた唇から覗く、牙。きっと、微笑んでくれている。
     ああ――どうしてだろう。涙が、溢れて来てしまって。
    「おべ、ろん」
     頭を撫でてくれていた手が、頬に触れて。
     掠れた眼を、昏い青に合わせようとするうちに。
    「ㅤㅤ……――」
     私は再び、眼を、閉じてしまった。

     ☆★

    「――……知ってるよ」
     瞳を開けると、手が、指先が伸ばされるところだった。無論、私に向かって。
     ぼやけた視界でもわかる、きらりと光る金色。左の薬指に填められている、指輪だった。私と、同じ。
     私と、色違いの、お揃いなのだ。かあっ、と熱くなった頬から、全身を駆け巡って。
    「知ってる。わかってる。……ずっとね」
     思わず胸に当てた。右手の、銀色薬指へと還っていく。それは、彼への、変わらない想いだった。
    「オベ、ロン」
     頭を撫でてくれていた手が、頬に触れて。そっと、拭うようにされる。
     どうやら私は、泣いていたらしい。また。
    「すき」
    「……うん」
     掠れ気味の告白に、ややあって頷く。
     昏い青も、変わらない。私を見つめる眼差しも、変わらない。ただ、
    「俺も、きみを愛してるよ」
     世界が、私が、あるがままに。彼の瞳へと、映るようになったのだった。
    「ごめん、離れて。不安にさせた?」
    「え……」
    「だから、泣いてたんじゃないの」
     ベッドの上。横たわったままの私の、傍らへと腰掛ける。
     ぴたりとした黒いパンツが、見えて。そのまま、ゆるやかに視線を上げていくと。
    「! ち、ちがっ……」
    「じゃあ、どこか痛いとか」
     気遣わしげに、私を見下ろしている。彼はその、まっさらな背中を、上半身を、さらしていた。
     半端にかぶっていた毛布を、つい胸元まで手繰り寄せてしまう。そもそも自分は、何も着ていない。
    「〜〜っ、ちが……違うの。痛いとか、……ない。なかった、から」
    「そう? だったら、良いんだけど」
    「……う、ん」
     にわかにはっきりし、彩られていく。私の視界と、脳裏には。
    「き、……きもちよかった」
    「……! そう」
     安堵したように、はにかんでいる彼との、夜が。鮮明に、映し出されていっている。
    「俺も、気持ち良かったよ」
    「ほんと……?」
    「ああ」
     深淵の青が、おもむろに迫る。心なしか鮮やかなそこには、私が、私だけが映っていて。
    「――本当・・
    「! んぅ、ン……ッ」
     堪らず両腕を伸ばしたのと、唇が重なったのは、どちらが先だったか。
     彼の首へと回した腕を、ぎゅっとする。濡れた唇の狭間で、舌先と吐息が、一緒に熔けていった。
    「ふぁ、ァ」
    「は……かわいい」
    「っ、オベ、ロ、ン」
     ちゅく、と唾液が音を立てる。彼も私も、夢中になって啜り合う。
     どちらのものかわからない。交ざり合ったそれに、魔力なんて含まれていないけれど。
    「可愛い、立香」
     だからこそ、私達は欲望のままに。互いを、恋い願うのだ。
    「……君は、格好良い」
    「マジ?」
    「マジ。に決まってる」
     こうして、小さく笑っている顔だって。昨夜みたいに、私を貪る、獣じみた顔だって。
    「――はい」
     私へ、木製のスプーンを差し出す。優しく、穏やかな顔だって。
    「……何?」
    「だいぶ冷めたと思うけど。んー……」
     ふわりと鼻先をくすぐった湯気が、私と彼の間を行き来する。確かめるように口へと運び、半分程、咀嚼して見せた。
     ぐっと喉が動き、首を縦に振る。持っていたさじを、彼が再び、差し向けた。
    「ほら、あーん」
    「っ、あ……」
     ん。反射で開き、閉じた口に、特有の食感が広がっていく。
     水分を含んだ、ごはんの粘り気。あっさりとした塩味に、ほんのかすかにピリつく生姜。ひと噛みでくずれたのは、鶏肉だろう。
     ごくんと飲み込む、ひとすくい。昨夜散々使った喉へ、労るみたいに沁み込んでいくそれは。
    「――おいしい」
     彼と、今しがた分け合った。ひどく温かな、お粥だった。
    「良かった。一応、味見はしたんだけどさ」
    「これ、君が……?」
    「……うん」
     見上げる顔が、ほんのり赤くなる。生姜と肉が、余っていたから。付け足された言葉に、堪えきれず、唇が緩んでしまったのだけど。
    「食べてからじゃないと、あの薬、飲めないだろ」
    「あの薬?」
    「いつも飲んでる、あの、アスクレピオス・・・・・・・が出してる……、」
     そこまで言って、はたと口をつぐむ。瞬きを、一度。それから、彼は私を、改めて見つめ直した。
    はもう、大丈夫だよ」
    「……っ、悪い。俺、何を」
    「謝ること、ないじゃん。オベロン、いつも、ちゃんと飲めって言ってくれてたもんね」
     忘れないように、サボらないように。あまつさえ、捨てないように。
     私の身体と、心を、ときに私以上に。このひとは、大切にしてくれていた。昔も――、
    「でも、あの薬は、いらないの。いらなくなったんだよ」
    「……立香」
     今も。ずっと、ずっと。“私”を見てくれている。
    「あ、けど、あれは飲まなきゃ。ねぇ、鞄、取ってもらっていい?」
    「? 薬……? 飲んでるの、あったんだ」
     ゆっくりと起き上がり、彼の隣へ移動する。
     ベッドの下に置いてあった鞄を、渡された。ポーチを取り出し、今日の分を用意しつつ答える。
    「うん、ピル。朝飲むようにしてるんだ」
    「へぇ……」
    これから・・・・、本当に忘れないようにしないとね」
    「……あー……そう、だね」
     もう一度、頬をうっすら朱に染めた。彼と再会して、しばらくが経つ。彼と二度目に別れて、ずいぶんが経つ。
     今の私を、静かに抱き寄せる。今の彼と、同じ、白い果てに行き着いたのは。
    「なぁ、立香」
     透明な愛を分け合ったのは、昨夜のことで。
    「いつか、指輪……きみの左手・・に、填めさせてくれる?」
    「は、…………」
     ひとの左手と、まっさらな右手。指と指を組んで、きゅっと繋いで。
    「は、い」
     向かい合って、約束口づけを交わす。私達が“永遠”を誓うのは、遠くない、未来の話である。
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