夜明けのモノローグどんなものかは思い出せないけど、不快で居心地の悪い夢を見て目が覚めた。
目覚めた視界がまだ薄暗いせいで今がいつ何時なのか、それどころかここが何処かも、自分が何かも曖昧になって混乱してくる。
「……っ」
大きく息を吐いて体が動くことをまず確認。
首を動かすと壁の時計が見えた。午前4時。
「あー……」
声も出す。思考を巡らせる。
大丈夫。イギリスじゃない。
今日は日曜のはずで、まだ寝ていてもいいはずだ。
しかし先ほどの夢の不快感だけが意識にこびりついてるせいで再び目を閉じようと思えなくなっている。
布団の中で身じろぎしながら、こういう時どうすればいいだろうと考える。
するとふいに、
『リョウくん知ってる? 夢ってさ、』
そんなふうに弾んだ声で話しかけてくる本多のことを想像してしまった。
なんでまず出てくるのが『あいつ』じゃないんだと自分の脳にツッコミつつ、その思考は広がっていく。
傍には興味深そうに聞く体制になってる柊がいて、この状況が面白そうだからと笑って眺めてる七ツ森がいそうだ。
かと思えば反対側から『どうした玲太ー?まだ走れるだろ?』と大きな体躯と声の颯砂と、横にはサーフボードを抱えたイノリが厳しい視線で『リョータ先輩しっかりしてください』と追い打ちをかけてくる。
……………。
……なんだこれ?
どうしてこんなおかしな……騒がしい想像になる?
あんな男共よりもっと大切で特別な幼馴染が出てきて、俺を甘やかすことを言うような想像をしたっていいはずだ、
思い起こすならまずはあいつがいい。
だってあいつは誰よりも優先したい存在だ。
再会のために戻ってきた。
『おかえりなさい』と笑顔で言われて、その日から俺は……、
「……」
そこまで考えて、立ち止まる。
受け入れるのに若干の抵抗がある思考。
でもこの気づきは受け入れるべきだと、そう決めて、前に進ませる。
……俺は、変わったんだ。
再会だけじゃない、出会いがあった。
おもしろおかしいだけで悪い奴らじゃない友人たちと過ごしていくうちに、好きなもの、やりたいこと……自分の気持ちが明確になっていった。
もちろんあいつを譲りたくない気持ちは強い。
けど、イギリスにいた頃とは違う……今みたいにおかしな想像になるような毎日を、俺はそれなりに気に入って過ごしてる。
それが俺の変化。
はばたき市で得たもの。
ーー大切なものは、幼馴染の存在だけではなくなった。
その自覚は、胸に少しの痛みを残しながら俺の意識に溶け込んでいった。
すると不思議と体の力が抜けたのか、眠気で瞼が重くなってる。
もう一度寝て、日曜は4人で出かける約束だったか。
ああ……、それにしても。
俺の日常はこんなにも騒がしくて、様々な色で溢れていたのか。
今更気づいたことを言うと、あいつはどんな反応をするだろうか。
「ふふっ。賑やかでいいよね」
微睡んでいく意識の中、今度は軽やかに笑うあいつが想像できた。
[end]