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    nekoruru_haya

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    nekoruru_haya

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    一年振りにお会いできたフォロワーさんへ押し付けたSS。
    タイトルはお題でいただいたものです。

    ##くわまつ

    云いたかった云えなかった「僕ね、松井の事、好きなんだ」
    何の脈絡もなく、突然、青天の霹靂、藪から棒に桑名が云った。全然そんな雰囲気ではなかったし、なんなら今僕はやりたくもない畑仕事に当番でもないのに駆り出され、厭々ほうれん草の種蒔きを手伝わされているところだ。大方、こうやって当番以外でも割合に簡単に手伝わせる事が出来るのを重宝がってるってだけだろう。
    「あ、そう」
    適当に相槌を打つ。
    指先で土に穴をあけ、そこに種を数粒ぱらぱらと零し入れた。
    「あれ、伝わってない?」
    隣の畝のよく育ったほうれん草を収穫していた桑名が手を止めて僕を見る。前髪の奥をじっと見返してから手元に視線を戻して呟いた。
    「伝わってる。でも畑仕事は好きにはならないよ」
    種の上に土を被せる。ぎゅっと表面を押さえつけた。
    「そんなに強く固めたら芽が出なくなっちゃうよぉ」
    「え?」
    土を押さえる僕の手首を桑名が掴んだ。軍手越しに桑名の体温が伝わってくる。
    「大切に育てる為には土は被せないといけないけれど、それじゃあ苦しいだけじゃない?」
    すくい上げられた僕の手の土を払い、自分の軍手を外して指が絡めてくる。咄嗟に逃げようとした手はしっかり繋がれてしまった。
    「何の、話……?」
    大きな鼓動の所為で声が震える。
    「ほうれん草の話」
    「あ、ああ、そうだね。すまない」
    「それから──」

    僕は君が好きだよって話。

    僕を真っ直ぐに見つめているだろう強い目線に息が詰まる。思わず固まってしまった僕にやわく微笑んだ桑名はそれだけ云うとまた作業に戻ったいった。
    「僕は云いたかったから。松井は松井の好きにしたらいいよ」
    抜いたほうれん草の土をはたき落としながら、桑名の背中がそう告げる。
    云えずに隠してしまった想いが込み上げてきた。
    云いたくて云えなかった言葉はもしかすると、桑名には伝わっていたのかも知れない。
    畑仕事は嫌いでも、桑名の事は嫌いじゃない。
    「桑名っ」
    思いがけず大きな声が出て自分で吃驚してしまった。桑名がこちらを向く前に、そのじゃーじの背中をぎゅっと握り締める。
    「なあに?」
    やさしい声音が続きを促す。
    「……僕も、桑名の事が」

    何の脈絡もなく、突然、青天の霹靂、藪から棒に僕も云いたかった言葉を伝えよう。



    ‥了
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    nekoruru_haya

    PROGRESSくわまつですが書き手以外誰も幸せにならない予定のお話の下書きというか荒書き。ちゃんとしてから後日支部に上げます。
    完結に向けてぼちぼち追記していきますので現状は途中経過の進捗見て見て構ってちゃんなので注意。
    .5や独自設定盛り込んでます。
    biotope歴史は大河の流れのようなもの。
    何れかのサーバーの何某という本丸の誰彼という刀剣男士がそう例えたと云う。果たして事実、そうなのだろう。世界が始まり時間が動き出したのを起点に歴史は流れ始め、時の政府が管理している現時点まで一筋の大きな河として流れ着き、この先へと恐らくは流れ続けていく。歴史の流れは大きく緩やかであった為、その道筋は逸れる事もましてや氾濫する事もなく、ただ過去から現在、そして未来へと流れていくものと思われていた。
    その時、までは。
    ある時、後に歴史修正主義者と呼ばれる未知の存在が現れた。彼等は過去から未来へと流れるだけだった時間を遡り、歴史という過去に起こった事実の改変を開始する。それは水面に小石を投げ入れて波紋を浮かべる程度で済むものから、巨大な岩で流れを堰止め、流れる方向自体を変えてしまうような改変となった。波紋程度であれば歴史という事実認識の強固さ故、自浄作用が働き、大勢に影響はない。だが、流れる方向が変わってしまえば今日までの道筋が違えてしまう。
    2031

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    ゆき📚

    DONE【sngk】【ジェリーフィッシュが解ける頃】Ⅵ
    現パロエレリです。
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    【ジェリーフィッシュが解ける頃】Ⅵ ゆるやかに街が暗くなれば反するように地上からそびえ建つ様々な人工物が人工的な明かりを灯していく。
     高層ビルの窓が不規則に四角く輝き、何かを宣伝するように緑と赤と青がびかびかと交代でリズムに合わせて光っているのが遠くに見える。
     リヴァイはそう言った人工的な明かりがあまり好きでは無かった。
     暗闇を照らす明るさは人間が発明した最高の科学のひとつだと思う。
     リヴァイはそんな事を考えながら空を見上げる。
     星が、見えねぇな
     心の中で呟きながら朝に見た天気予報を思い出す。今日は一日晴れ模様という事で確かに地下鉄まで歩く道すがらに見た空は小さな雲がいくつか浮かぶだけであとは青い色が広がっていた。
     そのまま夜になれば見る事ができるだろう星は
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