信頼「松井なら避けると思って」
「桑名なら堪えると思って」
手入れ部屋の中。
並べられた二組の布団の上にふたりで横たわる。久々の手入れな気がするな。慥かこの前は――、と考えてはたと気付いた。
「普段、松井君はともかく、桑名君はもう少し落ち着いてるように思うのだけど?」
審神者の遣いでやってきた近侍が苦笑を浮かべている。
「あはは」
戦はあまり好きじゃあない。だけど松井となら少しの無謀も計算の内に入れてしまうのは事実。これも全部、松井への信頼と云えばそうなのだけれど。
「桑名の所為で怒られたじゃないか」
「はあ……、あそこまでやれとは云ってないやん……」
「僕が悪いって?」
「悪くはないけれど、良くもないって」
「はあ?!」
「――はいはい、お終い」
近侍が大きく手を打って僕と松井の声を遮ると、手入れ部屋を出る間際にこちらを振り返った。
「お互いへの信頼感のなせる技、かな。とにかく手入れが終わるまで、ふたり仲良く、ね」
静かに閉められた戸にふたり同時に溜息を吐く。ちらりと松井の顔を見ると眉間に皺を寄せて舌を出していた。ふい、と向こうを向いた松井の耳の端が少し赤くなっているのに気付かなければ、前言撤回してたかも知れないなあ。