ちょこより甘く2/14。
朝から江のめんばあにちょこを配る松井を見掛けて、ああ、今日はばれんたいんだっけ、と気付く桑名。自分が貰う側にある可能性に微塵も気付かない桑名は、ちらちらと様子を伺う松井を知る由もない。
昼を過ぎ夜になり、もう日付も変わろうとした深夜。松井が早寝の桑名を文字通り叩き起こして山吹色の小さな包みを鼻先に突き付ける。でも顔はそっぽ向き。
「どうして欲しいと云わないんだっ」
「ええ……」
「もういい、これは僕が」
「くれないの?」
言葉に詰まる松井を覗き込んで目の前で手を広げる桑名。
「一緒に食べよ?」
「歯磨き済んでるし」
明らかに渡す機会を逃して拗ねている。
「じゃあ、歯磨きも一緒にしよ?」
ぐぬぬ、と呻いて包みを押し付けた松井が最後の足掻きに桑名を一睨み。
「早く開けて」
「はあい」
どけた掛け布団の代わりに懐に入った松井が桑名の胸を背もたれに座る。桑名は抱き締めるように前に回した手で包みを開けてちょこを摘まみ、「あーん」と松井の唇に触れた。そっと開いたまつの口にちょこを押し込むと、そのまま体を返して布団に押し倒し、自分の唇で塞いだ。
「……ん、ふ」
桑名の舌が松井の口腔内でちょこを融かして舐め取っていく。
「甘いねえ」
「……っ、びたーちょこだ!」
「じゃあ、松井が甘いんだねえ」
物足りなさそうに舌舐めずりする桑名にこのまま身を委ねるのかと思うと、確かに自分は甘いかもしれないと思う松井だった。