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    いなーさ

    @ottonounkohunda

    すたおのSS保管置き場です

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    いなーさ

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    好きって言い合いたいクロディ

     スタスタと先を歩く長髪の美丈夫の後ろから、追いかけながら声を張り上げる少年が見えてきた。二人はれっきとした恋人なのだが、傍目にはとてもそう見えない。完全な二人きりの空間でしか、なぜかそういう雰囲気にならないのだ。
    「どうして無視するんだよっ」
     前からはなおも返答がない。何やら腹に据えかねることが、二人の間であったらしい。が、自分の反応があるまで調子が変わらないと察したのか、諦めて歩くのをやめ、声の方へ振り返った。
    「しつこい。俺にどうしてほしいというんだ」
     構ってもらえて、クロードの表情がパアッと明るくなる。
    「そんなの、『好きだよ♡』の返事なんか、『サンキュー♡ 俺も大好きだぞ♡』しかないだろ」
    「……………」
     ディアスは汚物を見るような目をして黙り込んだ。恋人に向ける態度とはとても思えない。
    「僕はこの間、頑張って言ったのになぁ……ディアスからはもらえないのかなぁ……」
     わざとだ。わざと聞こえるように、未練がましそうに萎れてはいるが明瞭に聞こえる音量で、クロードは独りごちている。
    「お前……」
     忌々しい。文句を言ってやろうと口を開きかけた時、脳裏にふと、思いついたことがあった。
    「良かろう。なら、これから俺と賭けをしろ。俺に勝てばいくらでも言ってやる」



     宿屋に移動した。剣と荷物を下ろすと、ディアスは腰につけていた小袋を開けてゴソゴソと中を探り始める。クロードは後ろから声をかけた。
    「賭けって何をするんだ?」
    「コイントス」
     振り向いたディアスの指には、よく見かける普通のフォルの硬貨が挟まれていた。
    「裏表、だな。僕が負けたらどうする?」
    「そうだな……。服でも脱いでもらおうか」
     えぇっ、と大袈裟に両手で自分を包み込むクロードの動作に一瞬苛ついたものの、耐えて受け流す。どうせこちらの勝ち戦なのだ、好きにやらせてやろう。
    「始めるぞ」
     ピン、と音を立てて、ディアスはコインを宙に放り投げた。クロードの視線が一点に集中する。
     手の甲で受ける直前に、もう片方の手をコインの上に被せる。
    「───表!」
     答えた時、ディアスが僅かにニヤリと笑うのをクロードは見た。


    *****


    「……いい加減諦めろ」
     賭け始めて三十分も経たないというのに、クロードは最早上半身に何も身に着けていない。
    「いやだ、絶対に勝つまでやる」
     グローブから始まり、靴下、バンダナ、ジャケット、ベルト……と負けては脱いだものがベッド周りの床に乱雑に落ちている。この状態を誰かに見られたら、こちらが脱がすのを楽しんでいると勘違いされるな、とディアスは少し思った。
     やれやれ、といった顔で、長いため息をつく。
    「仕方ない……」
     飽き始めたディアスが、再びコインを投げ、受ける。今まで即答してきたクロードだが、今回はだいぶ逡巡していた。
    「おも……いや、裏かな……?でも確率的には表か……」
    「おい、早く決めろ」
    「たまには慎重に考えたっていいだろ。……………うん?」
     ディアスの言い方に、気忙しく急かすようなニュアンスが含まれている気がして、クロードは何か引っかかった。
    「……おも、やっぱり、う」
     クロードがゆっくりと回答を変える度に、ディアスの指が不自然に動く。
    「……なぁディアス、ちょっとそのコイン僕にも貸して」
    「…………………」
     ディアスは顔を背け、貸す素振りを一切見せない。クロードは鼻息荒くして、ディアスの両手を無理やり開き、中からコインを取り出した。いつも使っている硬貨よりも───
    「………軽い。それに、中心だけ少しごわつきがあるな……。…………砂?」
     見かけこそ普通の硬貨だが、振ると中から微かにサラサラ、という音がした。
     クロードはハッとした顔をした後、ディアスのはめているグローブを脱がす。指を全部ひっくり返すと、中から爪の大きさほどの黒い石が出てきた。
    「やっぱり磁石か! ディアス、卑怯だぞっ」
    「仕掛けがあるとは言ってないだろう」
     簡単な仕組みだ。部分的に異質な面がどちら側か覚えておいて、コインを弾いた後、回答によっては手持ちの磁石で直前にひっくり返したらいい。見せ方、ごまかし方に少々コツはいるが、ある程度練習すれば誰でも騙せるトリックだ。
    「こんなの持ってるなんて、一回も聞いたことないけど?」
    「お前に何でも全部言う必要もない」
     二年前、一人で旅をしていた頃、雑技団の護衛を依頼されたが大した依頼ではなかったので謝礼を断ったことがある。その時に形だけでも、と渡されたのがこれだ。
    全く使い道がなかったが、なぜか捨てる気にならなかった代物で、最近まで忘れていたくらい奥底にしまっていた。
     まさか今更、恋人との遊びで日の目を見ることになるとは思いもしなかったが。騙された当の恋人は、自分の目の前で睨みをきかせている。
    「ディアス、ズルしたから負けな」
     クロードは怒りに任せて、ディアスのマントや服を軒並み剥ぎ取っていく。
    「なぜ俺が脱がなきゃならない、口だけでいいという約束だろうが」
    「ふーん……。僕の裸見て、こんなに興奮してるくせに?」
     クロードはディアスの顔から目を逸らさず、右手でディアスの固くなったそれをズボン越しに強く握った。
    「……く」
     突然の快感に眉毛が歪み、声が漏れる。
    「お願い、好きって言って。ディアスの口から聞きたい」
     この、二人きりの時にしか見せない真剣な眼差しにディアスは弱かった。伏し目がちに、小声で返す。
    「………愛している」
    「……〜〜〜〜〜〜〜っ」
     クロードは目を見開いて、声にならない声を上げた。
    「ああぁもう! これだから男も女も関係なくディアスに寄ってくるんだ! 絶対に渡すもんかっ」
    ク ロードは強く抱きしめて、無理やりベッドに押し倒してキスをする。ディアスは片手をクロードの後頭部に回し、目を閉じてキスとその続きを受け入れた。
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