虎於が悠に「俺のどこが好き?」って聞く話「なんで俺だった?」
前を歩く悠が振り返って、きょとんとした顔を見せる。
「今さらそんなこと聞く…?ていうか言わなかったっけ」
「最初のほうに聞いた気がするが、よくわからなかった」
最初のほうというのは、悠のアプローチが明確に始まったころという意味だ。普段の行動や視線からなんとなく好意は感じていたものの、ささやかなアピールはすべて流していた。痺れを切らしたのかそうすると決めていたのか、高校を卒業したタイミングでとうとうはっきり「好きだ」と言われた。男からの告白が嫌だとか気持ち悪いとかそういう感情はまったく湧かなかったが、応える気もなかった。高校を卒業したとはいえまだ子どもだし、男同士だし、アイドルのメンバー同士だし。とにかくそういう対象として見ることができなかったから極力傷つけないような断り方を必死で探した。
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