駆け落ちif 2-1 深い深い森の中、道なき道を歩く。
見上げれば、生い茂る葉を透かして届く光。樹々は鮮やかに秋めいて、着物に落ちる影も暖色に染まって見えた。
枯葉を踏みしめる音、時折遠くで聞こえる小鳥のさえずり。静かな森の奥へ響いては、さらにその奥へと吸い込まれていった。
いつもの木陰に身を隠し、弓に矢をつがえる。
今日は驚くほど左腕の調子が良い。狩に出て正解だった。示し合わせたかのように、渡りを終えた鴨が湖畔で戯れている。
湖に打ち込むのはまずい。離れた一羽に狙いを定める。
力一杯右腕を引く。弦はギリギリと絞られ耳元で鳴いている。左腕に鈍痛が走り掌にジワリと汗が滲んだ。狙いを研ぎ澄ます。
右手を僅かに開く。
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