57 アル空喉の渇きで目が覚める。瞼を押し開くと、あまり見慣れない天井と照明器具が見えて、空はぼんやりと、眠る前の記憶を掘り返した。
容彩祭で絵師として招かれたアルベドと会えたことに浮かれていたのも束の間、彼はウェンティに酒を奢り、そのままずいぶんと長い間、吟遊詩人の話し相手をしていた。
久しぶりに会った恋人の空を蔑ろにしている訳ではない、と理性が呆れて訴えても、やきもきしていたのは事実だった。
いわゆる「やきもち」と呼ばれる感情に引っ張られていたのだが、どうやらアルベドも同じであったことが昨晩明らかになった。
行秋を始め、稲妻で出会った人々となんでもない世間話をしていただけと空は思っていたが、彼にとってはそう単純には映っていなかったらしい。
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