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    Iz_Mas_x

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    魏嬰ちゃん♀第9話の藍湛視点の続きです。
    酔っぱ藍湛パートに入り、だいぶ言動がおかしくなって参りました。

    #魔道祖師
    GrandmasterOfDemonicCultivation
    #MDZS
    #忘羨
    WangXian
    #女体化
    feminization

    献舎されて蘇った魏無羨が、何故か女性だった話 第九.五話 後篇 魏無羨と連れ立って賑やかな街並みから遠ざかるにつれ、藍忘機は何とか心身を落ち着けようと試みる。だが、少し前を歩く彼の髪を風が攫い、馨しい香りが鼻腔を擽る。心臓がやけに騒がしく、落ち着く為に深く息を吸い込めば、彼の香りが肺腑に染み渡る。悪循環だ。
     渋い顔で魏無羨の後を歩いていると、人通りの少なくなったところで彼が振り返った。櫟陽常氏のことを訊ねたいのだろうと直ぐに思ったが、それにしては彼の表情は冴えない。何か心配事があるのだろうか。
     あの魏無羨が言い難そうに逡巡しているのだ、余程のことなのだろう。藍忘機は彼の心が落ち着くまで、いつまでも待つ積もりだった。だが、彼は心の中でけりを付けたのだろう。

    「その……常家の事件は、俺がやったんじゃない……よな?」

     不安げな表情で見上げられれば、藍忘機は即座に「違う」と否定した。魏無羨がそんなことをする筈がない。夷陵老祖と恐れられ忌み嫌われていた彼は、誰よりも真っ直ぐな心で正しいことを成した人なのだから。
     己の言葉にホッとしたように相好を崩し、無意識なのか胸を撫で下ろすその仕草に、藍忘機は胸の奥が擽られた。愛おしいと思う気持ちと、何物からも守りたいと思う気持ちが綯い交ぜになる。
     彼が何も憂うことなく過ごせるように隠してしまいたいが、彼がそれを望まないことを藍忘機も知っている。彼は義に篤く、困っている人が居れば見過ごすことなど出来ない人なのだから。
     そんな彼だから、藍忘機は心惹かれたのだ。
     だから、言わなければならない。常家の事件に彼が全くの無関係ではないことを。きっと彼は、何故その時に生きていなかったのだと、義憤に駆られるだろう。自分が居れば、そんな悪事を見逃さなかったと。
     心苦しかったが、藍忘機は重い口を開いて常家の事件の真相を語った。暁星塵と宋子琛を襲った悲劇と、薛洋の純粋な悪意についての顛末を。最後まで黙って聞いていた魏無羨に、違和感を覚えながらも。
     俯いたままの彼を促して、藍忘機は常氏の屋敷を過ぎてそのまま墓地へと辿り着いた。藍忘機の耳が、其処から聞こえてきた僅かな音を捉えたからだ。
     果たして、音の正体は一人の墓荒らしだった。
     その男は顔と剣に術を掛け、身元を隠していた。顔は兎も角、剣にまで術を掛けるとは、それなりに名の通った者なのだろうと見当が付く。実際、その男は姑蘇藍氏の剣術に精通していたのだから。
     だが、藍忘機には心当たりがなかった。死体を背負っていた所為もあるだろうが、その男の腕が然程のものではなかったからだ。この程度の腕前の者など、門弟の中に幾らでもいる。仙師として伸びずに離れていった者まで含めれば、藍忘機の記憶力を以てしても絞り込むことは困難だった。
     不利を察したその男が取り出した伝送符を見た魏無羨が、咄嗟に地中に眠る死体を呼び出した。彼等は笛の調べに従い、墓荒らしの四肢に纏わり付き、男の首と腕に噛み付いたのだった。
     生者に喰らい付く亡者の悍ましさに藍忘機は生理的な嫌悪感を覚えたが、直ぐにかぶりを振ってその考えを打ち払う。
     墓荒らしは鼻を鳴らすと、霊力を衝撃波に変えて亡者たちを弾き飛ばした。だが、背負っていた死体までも吹き飛ばしてしまい、罠に嵌まったことに気付いたようだ。
     悔しげな男の仕草を後目に、魏無羨が墓石を叩きながら大笑いしている。煽るその態度に、藍忘機はふと座学の頃を思い出し、複雑な心境を抱えながら死体を受け止めようとして違和感に気付いた。
     重たそうな見た目に反して、宙で描かれる弧が緩やかなのだ。片手で受け止めて確信する。この死体は──。
     反対の手で避塵を突き出したが、男は分が悪いと判断したのだろう。すぐさま伝送符を足元に叩き付けると、文字通り煙散霧消した。
     だが、魏無羨は全く悔しがる様子を見せない。彼も伝送符を見た時点で、例え捕らえた所で隙を突いて逃げられることを想定していたのだろう。
     改めて死体を検分し、それが求めていた左腕と同一人物のものであると確証を得た。そして、墓荒らしが素性を隠していたこと、藍家の剣術に精通していたことを踏まえて、魏無羨によく知る人物かと問われた。
     「違う」と明言すれば、彼は藍忘機の言葉を疑うことなく受け入れた。そのことが、藍忘機をどれほど心震わせたか、魏無羨は気付いているのだろうか。
     期せずして手に入れた胴体を左腕とは別の封悪乾坤袋にしまうと、荒らされた墓を適当に片付け、暫く辺りを見て回った。他に異常が見当たらないことを確認すると、二人は先程の酒屋通りに戻った。
     感心なことに、既に閉まっている店が多い中で、その店はまだ営業していた。だが、くだんの雇い人は馴れ馴れしくも魏無羨に話し掛け、彼もまた笑顔で答えているのが面白くない。
     足早に先程の席に着けば、直ぐに魏無羨もやって来る。周りに人が居ないことを良いことに、魏無羨は常萍の死因について訊ねてきた。あらましを簡潔に伝えると、彼は言葉を選びながらも考えを述べようとして、途中で止めた。
     雇い人がつまみにと落花生を持ってきたからだ。余計な真似をと思わずめ付けると、彼はそそくさと去って行った。懲りない男だとその背を忌々しげに見送り、そのまま魏無羨に視線を向けた。
     話を中断されたのを良いことに、彼は意見を述べるのを止めてしまった。険しい顔のままだった為、彼は意見を言わないことを藍忘機が責めていると勘違いしたようだ。
     確かに、魏無羨のことならば何でも知りたいと思っている藍忘機だが、まだ言えないのならば待つことは出来る。既に十三年も彼との再会を待っていたのだから。彼の望みならば何でも叶えてやりたい。
     だから、藍忘機は勧められるままに酒杯をあおった。
     カッと喉が焼けて胃の腑に落ちてゆく。呼気までが強い酒精に染まり、思考はふわふわと止め処なく漂う。藍忘機はただただ、目の前の魏無羨をジッと見詰める。見た目こそ性別すら変わってしまったが、其処に居るのが魏無羨なのだと思うと喜びに満ち溢れた。
     やがて、抗い難い睡魔に襲われた藍忘機は、それを振り払う為に眉間を軽く揉み解し、其処で意識が途絶えた。

     ◇

     甘く柔らかな幸せに満ちた夢を見た気がする。
     魏無羨に手を引かれて町中を歩き、目に留まった耳飾りや首飾りを贈り、それを着けた魏無羨は似合うかと訊ねてきた。似合うに決まっている。まるで彼女の為に誂えたかのようにぴったりなのだから。
     彼女──そう、夢の中でも魏無羨は女の姿をしていた。小さくて柔らかな掌から伝わる温もりが、魏無羨が生きているのだと伝えてくる。そのことが嬉しくて、堪らず藍忘機はその指先に唇を押し当てた。
     「擽ったいよ、藍湛」と彼女は笑った。己の名を呼びながら大輪の花が開いたような美しい笑みを見せる彼女の姿に心が震え、藍忘機はそのまま唇を手の甲、そして手首へと滑らせてゆく。彼女がまた擽ったいと笑う姿に、藍忘機は確かな幸せを噛みしめた。
     だが次の瞬間、藍忘機は見知らぬ部屋に居た。僅かな月明かりが照らす寝台に、彼女の姿は無い。彼女を求めて藍忘機は表に出た。魏無羨は一体何処に行ったのだろうか。
     当て所なくさ迷ううちに、藍忘機は魏無羨を見つけた。彼女は鬼将軍の頭を掻き抱いていた。彼女に近付く鬼将軍を許せないと思った。彼女に号で呼ばれても、藍忘機は怒りの余り反応出来なかった。
     早く鬼将軍を彼女から引き離さなくては。その想いだけで藍忘機は彼を突き飛ばした。だが、上手く力が乗らず、然程遠くに追いやれなかった。「離れろ」と、不機嫌を隠しもせずにそう告げながら、藍忘機は再び彼を突き飛ばした。
     今度は何丈(一丈:およそ三メートル)も先まで追いやることが出来たため、藍忘機は満足した。何人たりとも、彼女に近付く者には容赦しないと、そう心に決めていた。
     漸く彼女が此方に向かい合った。ぱっちりと開いた円らな瞳が、上目遣いで見上げてくる。非常に愛らしいその姿に、藍忘機の心臓は途端に速く鼓動を打ち鳴らし始めた。
     一刻も早く自分だけのものにしたい。その想いで、差し出された指を握り締めた。君は私のものだと、確かめるように握り締めるが、指は抜かれてしまう。元に戻すように握り締めた拳を見せるが、彼女には伝わらない。
     だが、彼女が一緒に帰ろうと言ったので、藍忘機は首肯して彼女は後に続いた。魏無羨の望みであれば、何でも叶えてやりたいと願っているのだから。
     それでも、許せないことはある。魏無羨が鬼将軍に話し掛けようとしたのだ。何故、邪魔をするのだ、彼女に近寄るなと、怒りのままに彼を殴りつけると、彼女は何故殴るのだと叱責してきた。
     彼が魏無羨に近付こうとしたのが悪いのに、どうして自分が責められねばならないのだと、藍忘機はその理不尽さに余計に腹を立てた。「離れろ!」と鬼将軍を威嚇すれば、漸く彼女は解ってくれたようだ。
     それなのに、魏無羨は腰に差した横笛を吹こうとするではないか。何故、他の男に笛を吹いてやろうとするのだ。そんな非道を許せる筈がない。私の為だけに吹いて欲しいのに、駄目だ。駄目だ、駄目だ、駄目だ。
     彼女から笛を取り上げて、必死に縋り付いて、漸く彼女は自分にだけ吹いてくれると約束してくれた。それで良いと満足した藍忘機は、彼女が常にそうするように指の上で笛をくるりと回してみせた。
     再会してからずっと彼女が身に着けていた笛だと思うと、ただの青竹とは思えず愛着が湧く。これも静室に隠さねばならない。魏無羨との思い出の品は、一つも余すことなく全て保存しているのだから。
     何時の間にか邪魔者は居なくなり、射干玉の夜に月明かりが射し込み、さながらこの世に藍忘機と魏無羨しか存在しないように思える。柔らかな白銀の光を受けた彼女は、白百合の花の精のように美しい。
     その彼女が「藍湛」と名を呼び、酔っても何故顔が赤くならないのかと訊ねてきた。首を傾げるその仕草が昔の魏無羨そのままで、藍忘機はついその華奢な身体を腕の中に閉じ込めていた。
     初めて抱き締めた訳でもないのに、その身の細さに改めて驚いた。僅かな力でも折れてしまいそうなのに、何処も彼処も柔らかい。柔らかくて、そして何よりも温かい。血が通っている生身の肉体を備えた魏無羨が腕の中に居る。嬉しくて、心が高ぶってゆく。

    「鼓動を聞いて」

     顔を見ても判らないなら、鼓動を聞いて欲しいと強請る。どんなに彼女を想っているのか、この鼓動が伝えてくれる筈。何故なら、心は最も雄弁なのだから。口下手な藍忘機にとって、口から出る言葉では想いを伝えることは難しい。
     素直に胸に耳を当てる魏無羨の姿に、また心が跳ねた。心から愛おしいと、心音が奏でる愛の調べは果たして、彼女に伝わったのだろうか。

     《続》
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