【雷ノラ】甘え下手エアコンの音が響く室内でノラは膝を抱えた。
ここは雷我の部屋で、二人きりで、ベッドに並んで腰かけて――それぞれスマホをいじっている。
いつものことだ。しゃべったり、一緒に何かをして過ごすこともないわけではないけど、大体こうなる。思い切り遊ぶとなると夜鳴全員で、となるのも理由の一つだった。
けれど、この時間は別に二人にとって苦痛ではない。少なくともノラにとってはそうだし、雷我も同じはずだ。なんとなく隣にいることが、空間や時間を共有することが、不思議と心地よいのだ。たまに交わす会話だとか、かけるちょっかいだとか、そういうのも含めて。
ただ、なんとなく今日は、落ち着かない。
サーフィンしていたSNSの大海を閉じて、ちらりと横の雷我を見る。雷我は相も変わらず真剣な眼差しでソシャゲにいそしんでいた。
「ねえ、らいがくん」
「んだよ」
「シないんですか?」
ぴくり、と雷我が固まる。はあ?という表情でノラを見た。
「お前、今朝から調子悪かっただろ」
「それは、まあ、そうですけど……」
別に風邪を引いたほどのものでもない。ただ今日は爆弾低気圧が高知を襲っていて、朝から暗いし怠いし頭が重たかった。信乃のような体質でもないはずだが、疲れがたまっていたのかもしれない。それで、ノラは今日一日随分とおとなしかったのだ。
「……シてえの?」
「え?」
不意を打たれて、とっさの返事が出来なかった。
「違えのかよ」
「違わないです」
嘘だ。
ムラムラしてるわけではない。むしろハッスルする元気がないのは雷我の指摘の通りだ。
でも。
「らいがくん、シたいって言ったらシてくれるんですか?」
「……いや」
「えーー……」
不満げに眉を顰める。
別に今日じゃなくてもいいだろ、と雷我はかたくなだった。
「大体なんで急にそんな」
「いいじゃないですかべつに」
でももういいです、とスマホの電源ボタンを押す。暇つぶしのパズルアプリでも開こうかとしたとき、「ノラ」と名を呼ばれる。呼ばれた方を向き、
「なんです、」
か、を言うときにはもう眼前に雷我がいた。
雷我の左手はいつの間にかノラの顔に添えられていて、あれと思えば、唇に柔らかな感触。
触れるだけ、重ねるだけのキスが、続く。
いつもなら――いつもなら、そのまま激しく何もかも奪われて、ベッドに押し倒されるのに。
左手がノラの後頭部に回り、そのまま引き寄せられている。
「ら、いがくん?」
さっきまで唇を合わせていたから、身体の距離はゼロに等しい。腕はやがて背中に回され、両手でしっかり閉じ込められている。
普段あまりしない体勢に、さすがにびっくりしてしまった。
「らいがくん何を、」
「お前さ」
目の前どころか真横にある、雷我の唇が勝ち誇ったようににやりと笑う。
「かまってほしいならそう言えバーーカ」
瞬間、ノラは己の頭の中が沸騰するのを感じた。
「ッッッうっさい馬ーーーーーーーーーー鹿!!!」
図星だった。