【原作軸】ファーストキスいい目印なんだよ、おまえがどこにいても見つけてみせるさ。
「真っ白な帽子だけじゃない、おまえを型作るものすべて、おれは見失わない。」
「ちょっと気の強そうな金色の眼も」
「ん…、」
頬を大きな掌が包み込んで瞼に触れる。少しかさついていて固い皮膚の感触、親指の腹でまるで宝物に触れるように優しく瞼から目尻と目を縁取っていく。その手は冷たくて火照った肌から熱を奪っていく。
(コラさんの手、ひんやりしていてきもちいい…)
「オレと違ってクセのない艶のある黒い髪も」
目から手は離れ、揉み上げを辿り、耳に髪を撫でるように指は流れていく。
「この珀鉛病が治ったらどんな肌になるんだろうなァ、」
耳の後ろを指がなぞり、耳朶を柔く揉み首筋に掌が添えられる。びくりと肩をすくめる。
「ははっ、あったけーなぁ…」
「…コラさん。」
「ドクドクいってるとさ…なんか、生きてるんだなァって…」
冷たかった掌がローの熱を分けてもらい、温くなる。トクトクと伝わる生の鼓動が心地よく、また無防備に急所に触れさせてくれることが嬉しくて首筋から手が離せない。壊れものに触れるように殊更優しく首の静脈を撫でる。擽ったいのか漏れた吐息すら愛おしい。
腕が静かに伸びてきて小さな掌が首に添えられる。
「ウワッ、冷てぇ!」
「ふはっコラさんだって、ドクドクいってる。」
紅い瞳に写る自分は珀鉛で白くなった部分もまだ肌色を残している部分も全て曖昧に等しくコラさんの色に紅く染められている。
(…綺麗だ。)
年の差とか、性別とかそんな括りなど気にもならない程に、毎日毎日惹かれていく心を止めることが出来ない。
瞼に耳に頬に額に口付けると、頬を紅く染めたローが呆けて口を薄く開く。その小さな口から覗く赤の眩しさに目眩を覚える、まだ誰もどこにも到達していない真っ新な身体。
(願うならこのまま綺麗なままで…)
どんなにこの手を汚すことになろうともオペオペの実は必ず手に入れてみせる。海軍でも正義の名の下にと大義名分を掲げてなんでもやってきた、他人に言わせりゃそれこそ汚いことだってなんでもやってきた。これからは誤魔化す為の【正義】という看板はなくなる。だから汚れるのは自分1人だけでいい。
(汚れた手じゃ、綺麗なおまえに触れることも出来やしない)
ミニオン島から果たして2人で無事に脱出することは出来るのか、それすら分からない。もしかしたら今日が最後かもしれない。
1人になってしまったとしても覚えていてほしい、おまえを愛している男がいたってことを。顔を近づければそっと閉じられた金色に受け入れられる多幸感に心を締め付けられる。
「…オマエを作るもの全て愛してるぜ。」
小さな唇に触れるだけの口づけを、黒いまつ毛に縁取られた瞼がふるりと震える、現れた金色に映った自分は今にも泣き出しそうな情けない顔をしていた。