なんだか面白くない バトルツリーのフィールドには強い風がいつも吹いている。かすかに潮の香がする気がする。その強い風に帽子があおられた。飛んで行ってしまう前にそれを押さえつけて、誰も勝ち上がってくる様子がないフィールドを睨みつけた。
ジムリーダーやチャンピオンはいつもこんな心境なのだろうか、と思わずため息をついた。
かく言うボクも、ひと時だけチャンピオンの座には居座っていたことがある。決して、本当に決して褒められることではないが、ボクはそのチャンピオンという肩書を数日足らずで離れた。もし留まったとしても、こんな状況にじっと耐えられる気が今でもしないな、と今でも思う。
さっき買ったサイコソーダは結露して水がわずかに滴る。もうすでに半分ほど飲み干した缶と軽く煽ってから、チラ、とひと席開けた先の席に座る幼馴染を見る。こちらを気にすることなくスマホでなにやら動画を見ている。その幼馴染こと、グリーンは動画から目をそらさずに、一緒に買ったの缶コーヒーををちまちま飲んでいた。その度にセットされた茶色い髪が、ゆらゆら揺れるさまをなんとなく見つめた。
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