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    2022/8/27 チャレ!25 & 主ライwebオンリー『バトルしようぜ!』 無配、展示物

    #レグリ
    registry
    #pkmn腐
    Pokémon Red

    オレはお前のこと嫌い お恥ずかしいことに、これにて片思い歴が二桁と相成りました。

     沈んでいく太陽が水平線に足をつけて、立つ波に小刻みに断ち切られながらもオレンジ色の光で海に道を作っている。空には雲も風も少なく、海は穏やかなさざ波を鳴らす。そんな景色を、ビーチの砂を裸足で踏みしめながら静かに眺めているのは仲睦まじいカップルではなく、腐れ縁の男二人ぼっちだ。加えて言うのであればそのうちの片方はオレで、もう片方は先程自白したあれそれの相手である。
     そんないかにもなシチュエーションに何の変哲もない成人男性二人で居合わせてしまった。ビジュアル的に華やかさの欠片もないであろう場面に胃もたれのような心地に陥っているオレの片思い歴は、もちろん月の数えではなく単位は年である。間違いなく誇れることではない。もっと言うなら片思いという甘酸っぱい表現に収めていいのかもわからない。酸いも甘いよりも負けん気や妬ましさが勝る自覚はあるのだが、それらを全部ひっくるめて長いこと一人相撲をしているのだから分類としては同じだろう。
     隣を歩きながら水平線を眺めるレッドの表情は読めない。どんなにいかにもな雰囲気であろうとも、オレら二人にとってはたかが散歩だ。散策だ。

     ゆっくりとした時間が流れる砂浜を歩くレッドをぼんやりと眺めながら、オレは小さくため息をついた。

     ■

     初めに少しおかしいな、と思ったのは初めての旅の途中だ。レッドが水色のスカートを身にまとった、それはそれはかわいらしい女の子とバトルを終えたのであろうタイミングを偶然目にしてしまったことがきっかけである。
     楽しそうに話す二人を見かけたオレは咄嗟に身を隠し、遠くから二人を眺めた。女の子に声かけられるなんてやるじゃん、くらいの気持ちで野次馬をした。
     かわいらしい女の子にちやほやされるレッドに妬ましさを覚えるのは、健全で年頃の男児として何にもおかしいことはない。しかしぱっちりとした瞳でいたずらっぽく笑いながら、レッドに熱っぽい視線を送るかわいらしい女の子を面白くないと思うこの心境は一体なんなのだろうか?
     はて?と頭をかしげながらも女の子が去ったあと一人になったレッドをからかいに行った。

     次に違和感を持ったのは、レッドがオレの世界から姿を消した時だった。
     リーグ制覇は幼いころからの目標であった。自分の姿を大衆の目にも、祖父の目にも留めたかった。その為にジム攻略もポケモン図鑑の調査も抜かりなしにこなした。何より、レッドに先を越されぬようにと努力をしたつもりだった。努力の甲斐あってか、オレは最短でジムを踏破していった。
     そうやってオレが必死にたどり着いた特等席をからかった挙句、それに座ることなく、なんの言葉も残すことなくカントーから姿を消した。これまでオレを追いかけてきたレッドはいなくなったのだ。その時姿を消したレッドに対してどうしようもない怒りと嫉妬を抱いたのは間違いなかった。

     そこから三年とちょっと。数年姿を見せなかったせいで死亡説まで語られながらも、優秀な後輩に首根っこを引きずられながらも無事に帰還。(顔を見た瞬間に横っ面をぶん殴ってやった)
     後に地方を転々としながらも時折故郷に顔を出すようになった。そんなレッド捕まえ安くなったレッドの身柄をポケモンリーグがやすやすと逃がすはずもなく、幾多の地方の強者を餌にしてリビングレジェンドとして海外に招集。(念のために言うとオレだってチャンピオンの枠として招集されたしレッドを何回かぶちのめした)
     強引な招集に文句をたれながらも逐一オレのもとに顔を見せに来るレッドに安堵感を覚えたが最後、自覚までのルートに入るまでは早かった。
     オレが自覚をした後も、その後レッドの放浪癖は特に改善されることはなく。オレも任された仕事を放る事をプライドが許すはずもなく。お互いやりたい事を優先した結果、自然に年に数回顔を合わせる程度の交流が続いた。今思うとこの頃の距離感が一番気が楽だったと思う。程よく忙しくしていればレッドに対するごちゃごちゃとした気持ちを考えることも少なかったし、来なくてもいいオレの所にわざわざ顔を見せに来るという事実に何となく満足していた。本当に、ちょうどいい塩梅だったのだ。

     しかし、そこにやってきたのが今回のレッドを伴ってのアローラへの出向だ。こんなに長い期間毎日のように顔を合わせたのは幼少期以来だろうか。今までの距離感がちょうど良いと思っていたところに過剰な供給があると人間どうしても混乱するものだ。最近になってやっと慣れてきたが、アローラに来てすぐは情緒のブレが半端なかった。過剰なくらいレッドを意識してしまったしそれを隠すのに必死だった。そんなオレの挙動を見て頭にの上にクエスチョンマークを浮かべてそうなレッドの顔を何度も見るうちにだんだん馬鹿らしくなってきたため今となっては挙動も落ち着いてきた気がするが、最初の頃はそれはもう大層疲れたものだ。
     そんなオレに構わずレッドは休暇の度にオレに声をかけては一緒に街を歩いたり各島を散策したりとアローラを満喫していた。
     今日だって街やその周辺を二人で気の向くままフラフラとしている時に「いい場所を見つけた」と連れてこられたのがこの砂浜だった。

    「こんなにいい場所なのに、女の子連れて歩こうとか思わなねーのレッド君は?」
    「……逆に聞くけどなんでそれをボクが出来ると思うの?」

     そもそもそんなつもりないのに誘う方が失礼でしょ。
     不貞腐れた様子でそう言いながら砂浜に足跡を残すレッドの背中を見る。じゃあなんでオレなんか誘ったんだという文句が出るのを寸で堪える。

    「そう言うグリーンはどうなのさ」
    「そりゃあ、エリートで愛想も顔も良くてバトルも出来るんだぞ。世間様はほっとかねえだろ」
    「バトルはボクの勝ち越しだけどね」
    「オレお前のそういうとこほんっと嫌いだわ」

     心底うんざりした声色で凄んでやると、レッドは口の端を上げて意地の悪い顔をする。昔よりくそ生意気になったものだと思う。
     イラッとした心地を隠さずにもう一度舌打ちをすると、オレの表情を見て気を良くしたのか、レッドは楽しそうに口を開いた。

    「まあボクはお前のこと結構好きだけど」

     言葉が出てこなかった。
     
     いつものオレであれば、ここぞとばかりにからかいに行くべき場面だとわかっていたけれども、反応が遅れた。遅れたどころか、衝撃のあまり二の句が継げない。

    「……え、何その顔」
    「ッべっつに!なんでもねーよ!」

     必要以上に大きな声が出てしまう。それに驚きながら立ち止まってこちらを凝視するレッドを置いて、なりふり構わずズンズンと足を進めて追い越していく。
     顔が熱い。最悪だ。レッドなんかにこんな反応するなんて恥でしかない。今まで上手く取り繕ってきたはずなのに、あんな一言で醜態を晒す自分の迂闊さを呪う。もっと言うのであれば心の隅で舞い上がっているオレをグーでぶん殴りたいし、なんだったら今すぐここで気絶したい。誰か鈍器で殴るか十万ボルトで脳みそ焼いてくれ。

    「グーリン、ちょっともっかい顔見せて」
    「うるせー」

     追い打ちをかけるようにオレの後を追うレッドを突っぱねる。いやしかしそもそも突拍子もないことを言ったレッドが悪いんじゃないか?奴の記憶を消した方がオレの精神の健康のための最適解なんじゃないか?こんがらがった頭に浮かんだそれはまさに天啓のように感じた。
     
    「ねえほんとに照れてるの?」
    「お前ほんとにマジで嫌い」

     とりあえずこのバカみたいに熱い顔をどうにかしたら、後ろでウロウロと鬱陶しいレッドの脳天に一発キメてやろうと心に決めた。
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