【カブトボーグ】装子供だったあのコたちは、いつの間にかお酒が飲める年にまで成長した。何度も病院のお世話になっている勝治クンもなんとかここまで来て、ワタシはほっと一息つく。リュウセイクンとケンクンはひと足先に社会人となり、勝治クンは大学に進学した。家族の次ぐらいには三人を見守っていると自負する身としては、高校の卒業式も涙腺にきた。大輝に歳をとったをからかわれたが、そんな大輝も息子の卒業式に感極まっていた。
「「「ロイドさーん!」」」
「オゥ」
夕刻、立派な袴を着飾った三人がわざわざワタシの店まで足を運んでくる。ワタシは店を閉めた。リュウセイクンは赤、ケンクンは黄、勝治クンは青を基調にした衣服を身に纏う。今日は成人式が行われていた。どこか昔のワタシたちに似ているようで、歩む道はまったく違う。三人はずっと繋がっていた。多分、これからも。会える頻度は減ったが、ワタシも三人を見守り続ける。
「三人ともお似合いでーす。ちゃんと写メは撮りましたかー?」
「あったり前だろ。ロイドさんにも後で送るから覚悟しとけ!」
「楽しみにしていまーす」
この店も大人が四人入ると少し狭く感じる。袴姿は動きにくいのか、ボーグバトルの流れにはならない。そう言えば新年にボーグバトルをしていたから今日のところはパスという訳なのか。話を聞くと明日以降はそれぞれの繋がりで用事が入っているらしい。木のように、さまざまな枝先での繋がりが出来る。きっとそれは彼らの糧になるはずだ。
「ロイドさーん、大丈夫ー?」
「(リュウセイクンもずいぶん背が高くなりましたー)大丈夫でーす。っと、」
「よろしくー」
「ぼくたち着替えてくるので、預かっていてください」
ケンクンから手渡されたのは、少し、いやそこそこのお値段のお酒だった。それが二本もあるのだから当然重い。ずっと床に置いていた訳だ。三人はいったん店を出た。どこか頼りなかった子供たちの姿はもうない。それが嬉しくもあり、寂しくもあり。彼らは袴をしっかりと着こなして成人式に臨んだ。
「……ワタシも祝わないとでーすねー」
お酒をそっと置き、準備を進める。三人の袴姿は実に良く似合っていた。お酒の重みが老体の腰に響いたのか、ちょっとだけ痛い。ぎっくり腰にならないことを祈って、三人が好きそうな物を並べる。食べ物の好みがバラバラだから、自然とバラエティ豊かな品揃えになった。