肺に満ちる彼の証 早朝。雲1つない晴天。清々しい空気。まるで僕を揶揄っているようだった。
煙草に火をつけて口元へ持っていく。スゥ、と大きく息を吸ってから、いつもとはなにかが違うことに気がついた。左手に持った四角い箱のパッケージに目を向ける。
司くんが吸っていた銘柄だった。
数秒間それを見つめたあと、ゆっくりと視線を青空へ向けて、息を吐いた。慣れていない味が染みた煙がゆらゆらと宙を舞うのをぼうっと見ていたら、目尻から一筋の涙が頬を伝って落ちた。
「…………僕のより、重い煙草じゃないか……」
灰皿に溜まったそれは、明らかに昨夜より多くなっていた。全部全部、今、僕が吸っている煙草の吸い殻だった。
もう、彼がここにいた証は、この煙草しかない。