パラドクスの君にパラドクスの君に
"人間は死に依って完成させられる。"
"生きているうちは、みんな未完成だ。虫や小鳥は、生きているうちは完璧だが、死んだとたんに、ただの死骸だ。完成も未完成もないただの無に帰する。"
"人間はそれに較べると、まるで逆である。"
"人間は、死んでから一番人間らしくなる、というパラドックスも成立するようだ。"
そう書かれたページから数分間、目を逸らせなかった。
映画やドラマ、小説、アニメ、漫画など様々な媒体において"死"の描写は、なによりも人々を惹きつけてやまない。たとえ悪人の死であっても、描かれ方によっては主人公の生き様よりも鮮烈で心に深く刻まれる。僕はアニメや漫画はさほど見ないが、演出家という職業柄ミュージカルや映画は数えきれないほど目にしてきたし、映像だけでなく文章からもインスピレーションを得ることは多くあった。
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