【蒼】 卵焼き『これ以上迷惑を掛けられない』
ひと言置手紙をして行方を晦ませた。今ごろ、自分勝手だと怒っているだろうか。迷惑なのはわかっていたが、私が隣にいることで悟が縛りを受ける事にも、悟に対する上の連中とやらの扱いにも、もう耐え切れそうにもない。何かしでかす前に、姿を消した方がいい。そう判断をしてひっそりと、様々な思いを孕らんだ呪術高専を後にした。
山深い場所に件の山小屋はあった。元々は狩猟を生業にしていた男の住居だったらしい。薪ストーブでもあるのか、蒼白い煙が使い込まれた煙突からするすると、鈍色の空に向かって伸びていく。蝦夷松の細く延びた枯れ枝や杉の葉、幹の根元や日陰には所々に、新雪が積もっている
「話は聞いている。今日から使えばいい」
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