ゆらゆらと盆に満ちたる水面は揺れて瀕死の傷で、正気をなくして街をさまようナギリ。腕の中には丸い物体。
それは神在月先生の生首。
二人で買い出しに出かけた路地裏で、リッパーに遭遇。そのままナギはコントロールを奪われて、神先生の首を絶ち落としてしまう。絶叫暴走の中でリッパーは倒すも、やった事は取り返しがつかない。生首を抱き上げて。
『…まる?』
それが、大事なものだという事だけは覚えている。当然返事はない。
『そうかおまえはまるだったんだな』
何日かはさまよって欲しいな。その場合、生首がどんどん腐敗してって(腐敗のレベルに至るか?)溶けかけた脳みそをヨーグルトだなって笑いながら食べるとか。もう〇と先生の区別ついてない。
もちろん死体発見から↑A級対応の超緊急非常線が引かれる。
で、官が見つけて、背後から声をかける。
振り返る時に全身から血刃が出て、更に目玉も内側が貫かれてぎょろりと浮いて、まるでリッパー/官の描いた手配書のよう。だから官はそれが『辻田さん』だとは認識せぬままに。
「辻斬りナギリ!貴様あ!」
どちらの名前にも反応しない。もう自分が誰だかもわからない。
それでも腕に抱いてる丸いものだけは守りたくて、パイルバンカーと正面衝突。相打ちになって官は殉職、ナギは塵に。
もちろん官の遺体と先生の生首は、悲しみとともに回収されるけど。
神在月先生の、残留思念だけが残る。(一瞬でやられたので、死んだ自覚がない)
ネームやんなきゃとか締め切りがとかは徐々に消えていって、最後に残ったのは『描きたいなあ』という思いだけ。
思いはぽつりぽつりと滴って、町に染み込む。
町を支える大きな盆を、やがて満たす。
ゆらゆらと揺れる水面は、月の光をモザイクのようにさざめかせる。
描きたいという思いだけが、万華鏡のように水面を彩る。
シンヨコ。
そんな光が奥底から時折きらめく、まち。