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珍しく事件も何もない穏やかな昼下がり。敢助と食堂で昼食を取り、くだらない話をしてそろそろ午後からの業務を始めようとしたとき、彼のスマホに電話がかかってきた。
「おう、どうした由衣」
どうやら着信は由衣からだったようで、こちらに合図をして席を離れると、少しして「本当か!?」という声が廊下から聞こえてくる。それから一言二言交わしたところで、敢助が慌てた様子で戻ってきた。
「悪い高明、由衣から病院行くつって連絡あったから俺も向かうわ。すまんがこの書類だけ頼んでていいか?」
「もちろんです。こちらのことは任せて早く行ってあげてください」
「お前も後で来るだろ?」
さも当然というように発された言葉に、はい?と思わず大きな声が出そうになるのを、コホンと咳払いをして誤魔化す。
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