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    bach_otamama

    @bach_otamama
    普段はFGOヘクトール受メインに小説書いてます。アキヘク、タニヘク、マンヘク多め。こちらはメギド72ロキマネなどFGO以外の作品を上げていく予定です。

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    bach_otamama

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    ロキマネ。現パロで、バレンタインデーに配信ライブをする二人。バレンタインデーにマネージャーからのチョコレートが欲しいロキです。

    チョコっとドーナッツ 暮れの頃に比べると、朝が来るのが早くなったと思う。それでも、目覚ましを止めた頃にはまだ暗かった。
    「まだこんな……違う!」
    傍らで寝ているロキがすり寄ってくる。
    「ん……いく、な」
    「大丈夫だって」
    薔薇紅色の髪をぽんと撫でる。もう少し寝かせてやりたかったが、今日はこれからライブの準備がある。マネージャーは急いで自分の身支度を済ませるとロキを揺り起こした。
    「起きろ、ライブの時間だぞ」
    「ん、まだ準備しねえ」
    言いながらもそもそと着替え始めたロキを視界の端で確かめつつ、マネージャーは持っていく品を確かめた。
    「これでよし、飯は途中でなんか買うからまず車乗れ」
    頷いたロキが靴を履く。少しだけ暖機運転をしてから、マネージャーはコンビニエンスストアへ寄った。
    「ほら、これ。乾燥には気をつけろよ」
    自分は中華まんとパンにかぶりつきながら、ペットボトルのホットコーヒーを飲む。店で丁寧に淹れたものほどではないが、独特の芳香が車内へ広がった。
    「二日酔いとか大丈夫じゃねえのか」
    「昨日は飲んでないの知ってるだろ。ほら、もうすぐ着くから」
    頷いたロキは袋を開けた。自分の好物が入っているのは嬉しいが、もう一つ何か。入っていると思っていたものはなかった。
    「マネージャー……」
    「どうした?あ、着いたぞ」
    理由はわからないがうまく話せないロキの言葉を彼はかなりくみ取ってくれるが、それでも話がかみ合わないことがある。言いたいことをお茶と一緒に飲み干すとロキはマネージャーの後ろからスタジオへ向かった。

     発声練習を兼ねて歌う。
    「Loki Rock You♪」
    「ん、もうちょいこれをこうして、かな」
    マネージャーが機材をセットする。
    「カメラは設置終わった」
    「そうだ!カメラつながないとだ。ありがとう」
    マネージャーはカメラとノートパソコンを繋いだ。それから機材をもう一度調整する。
    「オープニングトーク、覚えているな?」
    「アンハッピーバレンタイン」
    「違うって。ハッピーバレンタイン!ああ、俺も楽器習っておけばよかったかな」
    「何か音楽流せばいいだろう♪」
    「それもそうか。っとあと10分か。となると、SNSだな」
    マネージャーはスマートフォンでロキの写真を撮ると少し加工し、“これからバレンタインデー限定ライブ!楽しみにしてくれよな!”とメッセージを添えて投稿した。

     朝の7時きっかりに、マネージャーはデビュー曲のイントロを流した。
    「ハッピーバレンタイン♪今日は特別なライブだぜ♪聞いてくれよな♪Loki Rock You!」
    ロキが歌い出す。20分ほど経ったところでマネージャーは自分もマイクをつけた。
    「聞いてくれて、ありがとう。さて、本日の特別企画、バレンタインラップメッセージだ!」
    元舞台俳優として鳴らした声でアナウンスをすると、少しボリュームを抑えめにしつつ音楽を流す。歌えばきちんと話せるロキのために、ラップミュージックという体裁でファンからのメッセージに応えていった。
    「みんなメッセージありがとう!じゃあ、次はロキからのお礼に新曲いくぜ!」
    頃合いを見てアナウンスを入れ、また次の曲を流す。

     一時間のライブ配信は無事終わった。
    「お前ら愛してないぜ!さよならだ!」
    ロキがいつもの挨拶をすると、マネージャーはゆっくり10数えてから配信を終了した。
    「お疲れ様、今日も良かったぜ!」
    「楽しくなかった」
    「楽しかったんだな。いやあ、早起きした甲斐が……とこうしちゃいられない。片付け片付け」
    9時前には他の利用者が来る。それまでに原状復帰して返さねばならない。
    「っとその前に。ロキ、こっち向いてくれ」
    また写真を撮ってSNS用に少し加工した。

    バレンタインデーの限定ライブ。今年は月曜日とあって、夕方から夜の時間帯は人気のあるアーティストがこぞって配信の予定を入れている。幸い、プロメテウスのライブにゲスト出演できることが決まったのもあり、マネージャーは思い切って朝にライブをすることにした。車通勤のファンには申し訳ないが、電車やバス通勤なら移動中のスキマ時間を有効活用できる。有料会員のみの限定ライブで、リアルタイムで聞けないユーザーにはオンデマンド配信をすることにして、申し込みを募った。同じ時間帯にライブをする者があまりいなかったこともあって、マネージャーの目論見は見事当たった。かわりに早朝でも借りられるスタジオを探す手間はあったし、バックバンドは頼めず音源は全て録音になったがどうにかこぎつけた。
    「お、さっそくコメント来てるな。返信は後でするとして、まずは……」
    聞いてくれた人へのお礼コメントとオンデマンド配信の申し込みページのリンクを添えてSNSへ投稿する。それから機材を片付け、鍵を返して支払いを済ませた。

     いったんアパートへ戻って機材をしまう。
    「俺、ちょっと買い物行ってくるから。ロキは少し休んでろよ」
    「ん♪」
    買い物と聞いたロキの語尾が少し弾んだ。もしかしたら、これから買ってきて渡してくれるのかもしれない。そわそわとするロキへマネージャーは笑った。
    「じゃあ、行ってくる」
    笑い声を残してドアが閉ざされた。

     マネージャーは必ず帰ってくる。ずっとロキの中にある奇妙な記憶。メギド。ヴィータ。記憶の中のマネージャーは大怪我をして記憶をなくしていた。今、ロキの隣にいてくれる彼の体には傷跡さえない。ずっとそばにいてくれるのが嬉しい。多分、好きというのはこういうことなんだと思う。だからこそ、バレンタインデーにはチョコレートが欲しかった。感謝のしるし、甘い愛を伝えたい。先程の配信も、マネージャーを見ながら歌っていたことに気付いているだろうか。
    「チョコレート」
    呟いた直後にドアが開いた。マネージャーから、少しチョコレートの甘い匂いがする。
    「お待たせ。ほら、メシ買ってきたから食えよ」
    「ん」
    期待に目を輝かせて袋を覗き込むロキだったが、期待したものはなかった。
    「ない」
    「え?そんなことないぜ、ほら」
    ロキのファンの魚屋が作る特製弁当が中には入っている。“今朝の配信も良かったよ”とメッセージも添えてあった。
    「違わない」
    「何が違うんだ?」
    「違う」
    「お前でも緊張するんだな」
    勘違いしたのか、笑った彼はロキの頭をポンポンと軽く撫でてくれた。それが気持ちよくて顔をすり寄せる。
    (なんで言えねえんだろう)
    あの奇妙な記憶の自分もそうだった。メギドなんて、ソロモン王もシバの女王だって、ハルマさえ遠い昔のおとぎ話の中にしか、もういないのに。
    「はいはい。食ったら、歯磨きしろよ。また移動だからな」
    もう一度頭を撫でてからマネージャーは自分の分の弁当を開けた。

     プロメテウスのライブへのゲスト出演は無事成功した。
    「ありがとう!最高だったよロキ!」
    にっこり笑うプロメテウスは打ち上げに誘ってくれた。その店の料理は十分美味しかったし、バレンタインデーということでチョコレートのデザートもあった。
    「お、バレンタインデーだもんな。チョコレート、うれしいねえ」
    「マネージャーはチョコレートあげたのか?」
    「あげる相手かあ、そうだなあ」
    プロデューサーの本体を名乗る男性へ、マネージャーが答えているのがロキにも聞こえた。
    (ここにいる!どうして俺にくれないんだ!)
    じっと思いを込めて見つめるがマネージャーには届いていない。魔の悪いことに移動が電車だったので、マネージャーは酒も飲んでしまった。
    (もらえなかった……)
    「どうしたの?ドルマのピーマン、苦かった?」
    「チョコレート……」
    心配したプロメテウスがロキに尋ねる。うまくいえなくて、チョコレートとだけ言ったが、何度か共演した彼女は気づいてくれた。
    「ああ、そういう事ね。任せて!」
    何を任せてなのかはわからないが、ほどなくして上機嫌のマネージャーがロキのところへ戻ってきた。
    「いやあ、今日はいいバレンタインデーだなロキ!」
    「良くないが良かった」
    「何が不満なんだよ」
    「チョコレート」
    「ああはい、チョコレートね。わかったわかった。じゃあ行くぞ」
    手を差し出される。

     まだ開いていたカエルドーナッツの、バレンタインデー限定ドーナッツをマネージャーは買ってくれた。
    「ほら」
    差し出されたチョコレートドーナッツにかぶりつく。
    「美味いか?」
    「食べたのか?」
    「俺はいいよ」
    笑う彼にも食べてほしくて、ロキは唇を重ねた。

     チョコレート味のキスは、それはそれは甘くておいしかった。

     そのまま、酔った勢いでその先にも進んでしまったが、マネージャーは覚えていないと翌朝言い張っていた。
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    bach_otamama

    DONEフォロワさんへのお誕生日プレゼント代わりの掌編です。
    聖下の話。時間軸としてはROM6のパウラのバトル直後。
    ラストはレクイエムの歌詞ですが、ミサの際に唱えられる言葉でもあるそうです。
    本来は日本語に「レクイエム・アエテルナム・ドナ・エイス、ドミネ、エト・ルクス・ペルペトゥア・ルケアット・エイス」とラテン語のカタカナ表記をするべきなのだと思いますが、読みづらいのでラテン語の原文と邦訳を併記しました
    三度、知らないと言って 天地がひっくり返ったのだとあの時思った。実際にアイアンメイデンが回転し、文字通りひっくり返ったといえなくもないことをアレッサンドロはよく知らない。ただ、自分の命など歯牙にもかけないと思っていたパウラから向けられる眼差しが、これまでとは少し違っている気がした。

     冷厳なシスターの視線に込められたものをどう表せばいいのかアレッサンドロはわからない。かつて、幼い頃父に侍っていた女達が見せたような媚びとも、即位してから多くの者に向けられてきたような軽侮の念や失望などとも違う。むしろ、今までのパウラから向けられていたものはそれが近い。失望や軽侮ではなくもっと乾いたそれ、無関心という方が近かった。しかし、今のパウラがアレッサンドロへ向ける声や眼差しには立場上だけでないいたわりも感じられる。それは、亡き人を思い出させた。色も、性別も違うのに。
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