おいしいウインナー ウインナーが好きだ。歯を立てた瞬間、口の中に溢れる肉汁。それをはふはふと熱を逃がしながら噛んで、飲み込む。あの幸福感は病みつきになる。
俺の目の前には山積みのウインナーがあった。立ち上る湯気から、うまそうな匂いがただよってくる。
空腹に耐えられずウインナーを一本、手掴みした。熱くはない。ちょうどいい温かさだ。
「バスティン」
誰かの声がする。邪魔しないでくれ。俺は今、食事中だ。
「バスティン、起きて。それはウインナーじゃないよ」
その一言に、はっと目を覚ました。
確かに、口の中に入っているのは、ウインナーとは程遠いものだ。少ししょっぱくて、細長い。肉はついているが極わずかだ。ほぼ骨といってもいいだろう。しかも、白い。ゴツゴツしている。まるで人間の……男の、指のようだ。
「……こら、バスティン。あんまり舐めないでくれ。くすぐったいよ」
おかしそうに笑う声が聞こえる。
霞んでいた視界がクリアになってきた。ぼんやりとした人影が鮮明に浮かび上がっていく。
「おはよう、バスティン。そんなに私の指はおいしかったかな?」
目の前には微笑む主様の顔があった。俺はウインナーではなく、主様の指を食っていたのだ。