ふたご あ、まずい。そう思った時には既に遅い。有名なことわざって案外的を得てるよなぁなどと現実逃避する。
その時の迅には、目の前の新緑色がおおきな悲しみと、静かな怒りで色を濃くしていくさまを見ていることしかできないでいた。
事の発端は迅の何気ない発言で、それを聞いた嵐山の堪忍袋の緒がついに切れたようだった。
母を亡くし師を亡くし仲間を亡くし、自暴自棄になっている自覚は多少なりともあった。生まれ持った能力による自身の命の重さを知らないわけではない。けれど、大切に思っていた人たちを喪う辛さを、未来を知りながら何もできなかった無力感を、そう間を空けずして何度も味わってしまえばそういう考えになるのもしょうがないだろう、と迅は思うのだ。
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