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    まいるまの二次創作小説を書いてます。
    雑食ですが、よく書くのはシチカル、イルアズ、兄叔父です。

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    2021年5月6日にあげたゴムの日シチカルです。叔父上がエゴをからかうお話。
    シチロが談話室を訪ねるところから……
    外伝未読の方ご注意ください。

    #シチカル
    sitzcal

    5月6日 何回かノックをしても返事もない。たしか、談話室に行くと言ってたはずだけど。ドアノブを回すと簡単に開いた。
     この部屋に入るのは初めてだ。前に来た時はカルエゴくんが「俺が一人で入るからお前は外で待ってろ」と言って、廊下で待たされた。
     部屋の中は電気もつけず、カーテンも閉めたままで薄暗い。タバコとお酒の嫌な匂い。窓を開けたいくらい。足元もよく見えない中を窓に向かって進むと、突然何かにつまずいて派手によろめいた。

    「いってぇー」男の人の低い、不機嫌そうな声。
    「ごめんなさい! 気が付かなくて。」
     シーツをかぶった人影が、のそりと上半身を起こすのが見えた。黒くてボサボサの癖っ毛に、無精ひげ。多分この悪魔が、カルエゴくんの叔父さんだ。会うのは初めて。
    「ノックをしたけれど返事がなかったので、勝手にごめんなさい。」
    「あー、呑みすぎた。頭がガンガンする。」
     僕のことなんか目に入らないように、その悪魔は散らかった机の上をゴソゴソかき回して、「みず…」とつぶやいた。
     このだらしない悪魔が本当にカルエゴくんの叔父さんなのかな。
     不思議な気持ちで見守っていると、その悪魔の足元に水の入ったペットボトルが転がっているのが見えたので、拾って渡した。
    「ん? 助かる。」
     その時初めて、その叔父さんと目が合う。
     カルエゴくんよりも甘い雰囲気の瞳。でも、癖の強い髪の毛がカルエゴくんにそっくり。そんなことを言ったらカルエゴくんに怒られそうだけど。

    「えーと? 何の用だった?」
     キュルキュルとペットボトルのキャップをゆるめながら、その悪魔が聞くので、ここに来た目的を思い出す。
    「カルエゴくんを探しに来たんです。談話室に行くと言ってたからここかと。」
     名前を出すと、水を飲んでいた手がぴたりと止まる。
    「ふーん……君、俺の可愛い甥っ子と仲良しなの?」
     ふいに、手が伸びてきて僕の前髪をかき上げる。突然のことで、緊張してしまった。
    「……へぇ…」
     さっきまでとは違う、何かを見透かすような鋭い目で、僕の顔をまじまじと見つめてくる。何だろう、少し怖い。前髪を触っていた手は、そのまま耳の横を通って、肩のあたりまで移動してきた。どうしよう、この場をすぐに立ち去った方がいいかも。虚偽鈴とは違う、本能的な警戒心が働いた。

    「シチロウ!!」
     ドアが勢いよく開いて、尋ね人が姿を表し、思わずほっとため息をつく。
     カルエゴくんは、何かを蹴散らしそうな勢いで部屋の中まで進むと「一人で談話室に向かったと聞いて慌てたぞ! 何でこんなところに一人で来るんだ!」と何故か僕を叱ってきた。
    「こんなところ、って言い方ひどいんじゃないの〜? 君の叔父さんの居場所なのに〜。」
     へらへらと笑っている様子からは、もうさっきの鋭さは感じられなかった。
     
    「僕はカルエゴくんを探してたんだよ。先輩が呼んでる。」
     番長と呼ばれるその先輩は、よく僕達を呼び出しては色々な用事を頼んだりしてきた。僕は楽しんでるけれど、カルエゴくんはいつも溜め息で応じてる。今回も「またか…」と言って軽く溜め息をついて、やれやれと言うようにドアへと向かっていく。

    「か、る、え、ご、ちゃーん?」
     楽しそうに呼び止める声。「叔父さんが入学祝いに良いものをあげよう。」
     カバンの中に片手を突っ込みながら、その叔父さんはもう片方の手でおいでおいで、とカルエゴくんを呼び寄せた。
     いかにも嫌そうな表情でカルエゴくんが「何ですか?」と苛立ちもあらわに近寄ると、何か手の中に握った小さなものを、無理矢理叔父さんに握らされているのが見えた。何を渡されたかまでは見えなかったけれど。

     手の中を覗いたカルエゴくんは、ぐっと息を飲んで突然耳まで真っ赤にした。
    「叔父上!! 何のつもりですか!!」
    「きっと、そのうち必要になるよー。俺の可愛い甥っ子も大人の階段登る頃でしょ? 準備は大切!」
     とても楽しそうにしてる。
    「入学早々、可愛い子と仲良くなったねー」と僕の方を見ながらニヤニヤと。
     
    「叔父上」
     低い、芯の通った声でカルエゴくんが僕と叔父さんの間に立ち塞がった。
    「からかうのはその辺で終わりにしてください。シチロウをそんな下品な冗談に巻き込まないでいただきたい。」
     これはお返しします、と叔父さんの手の中にさっきもらったものを突き返す。小さな四角いビニールのような、キャンディの包みみたいなものがチラリと見えた。
     
    「ふーーん。俺の甥っ子もそんな顔するようになったんだね…」
     叔父さんはちょっぴり寂しそうにしてから、
    「じゃあこれは、シチロウくんにプレゼントー!」
    「叔父上!! いい加減にしてください!!」
     カルエゴくんは、叔父さんの手から遠ざけるようにして廊下へ僕を引っ張り出すと「二度と一人でここには来るなよ!」とまた僕を叱った。
    「何でそんなに怒ってるの?」と首をかしげる僕を「うるさい!」と怒鳴りつけ、真っ赤な顔のまま歩き出した。
     
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