腹が減っては、部屋の扉が閉まると、ついに彼と二人きりとなってしまった。
自分はこれからどうなってしまうのか。そればかりが頭を占める。
コツコツコツと革靴の鳴る音を聞きながら、俯いて膝の上で拳を固く握る。
「名前は?」
静寂を割く声に弾かれたように顔を上げると、思っていたよりも穏やかな顔の彼と目が合ってしまったものだから、一瞬何を言われたのか分からなくなってしまった。
「き…キム・ヨンス」
呆然と自分の名をつぶやくと、彼は眼を細めて、
「ではヨンス。」
「はい」
そして言った。
「腹は減っていないか?」
「…は?」
テーブルに次々と並べられる皿を見ながらヨンスは戸惑っていた。
あの後、あれよあれよという間に神室町にある焼肉店に連れてこられた。
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