Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    sssawara

    @sssawara

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 9

    sssawara

    ☆quiet follow

    お題:怪我

    付き合ってる現パロ

    「あ、」
    ジャガイモでは無いものに触れた感覚がして、尾形は零れ落ちるように呟いた。見てみると、親指がぱっくりと割れている。切った。そう思っている内に、じわりと赤いものが滲んだ。
    「あーあ」
    みるみるうちに溢れて、手を伝ってシンクの中を汚していく。次々と赤く染めていくので結構派手にいったなと思ったら、途端にジンジンと痛み出した。
    「ティッシュ……」
    は、近くには無い。どの道薄いティッシュでは何枚重ねたところであまり役目は果たさないだろうと、掛けてあった手拭きタオルで手ごとぐるぐると包み込む。それでもやがてじわあと血が滲んできたので、少し考えてからリビングへと向かった。
    「杉元」
    「んー。なに、どしたァァァアアア!!?!!!!」
    振り返った杉元が、まるで幽霊にでも会ったかのような顔をした。ブオオン、と唸りを上げていた掃除機が無音になって、ガシャン、とほとんど落とすみたいにして、ホースが床に転がる。
    「おい、壊れるだろうが」
    「そうだけどそうじゃねえ!!」
    おまえどしたこれ包丁!?ピーラー!?えっやばいぞこれちょっとだいぶ深くねーか痛いよな!?
    ぐるぐる巻きの手をそっと持って騒ぐので、耳元でうるせぇなあと思いながら自らの手を見ると、白いはずのタオルが、自分が認識していた以上に赤くなっていた。
    「……血が」
    「そうだよ血だよ!!これ救急車!!」
    さすがにそれは止めて、すると抱え上げて駐車場まで降りようとするので何ともないほうの手で石頭を叩いて、それでもどうしても杉元は大慌てで、尾形はほとんど引き摺られるようにして病院へと行くことになった。

    「三針だってな」
    「大したこと、」
    「あるだろ三針つったら」
    明治じゃねえんだぞ。杉元が、溜息をつきながら包帯を巻いた方の手に触れてくる。包帯なんて大袈裟な、と思うが、ここまで固定しないと駄目らしい。しばらく重力でも痛むだろうと痛み止めを貰ったが、重力云々以前に膝に置いているだけの今でも痛いなんて聞いていない。
    「……帰ったら痛み止め飲む」
    ジンジンと疼くような痛みが気持ち悪くてそう呟いたら、杉元が少しだけ目を見開いた。それから「そうしろよ」と言って、包帯のほうに置いた手をそのままに、ベンチに深く腰掛ける。
    カレーライスの準備を始めたのが確か昼飯を食べてすぐだったのに、いつの間にか日が傾く時間帯になっていた。病院のロビーには、窓から橙色の光が差し込んでいる。
    「痛いって、尾形が言うの珍しいな」
    ちょっとうれしい。
    小さく呟かれた言葉は、独り言なのか尾形には判断がつかなかった。反応できないままちらりと目だけで隣を見やると、いつもよりも少しだけ、頬の緩んだ顔があった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺💞💞💞💞💞💞💞💞💞🐱☺💖💖💖🏥💕💕💕💕
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    sssawara

    DONEお題:鍋パーティー
    とりあえず今はぬくいので 白菜クタクタになってるぞ。月島、カニが煮えてるが食うか?はい、頂きます。杉元ビール切れちまった。お前も少しは働け。クーン。
    「あ、おかえり」
     尾形がリビングの入口で固まっていると、対面キッチンから缶ビールを手にした杉元がひょっこり顔を出した。
    「……今日なんかあったか」
    「いや、前から言ってただろ。今日は鍋パだって」
     ああ、そうだったか。そんな気がする。こちらの意思なぞ関係なく加入させられた、グループ名〝 お寿司有〼〟。そのメンバーである杉元と尾形以外のふたりと、少女の父の友人である男、仲良くも無いボンボンに、その世話役、では無いが不本意にもいつの間にかそうなってしまっている男。
     ふたりで物件を決めた時は十分広いなと思った十二畳のリビングが、広いどころか狭くすら感じる。いつも並んで座るソファは壁の方に追いやられて、リビングの中心に鎮座した炬燵を、皆がきゅうきゅうと身を縮こまらせ取り囲んでいた。救いなのは、その炬燵がファミリーサイズだったことだ。全身余すことなく暖かく包まれたいし、出来るだけこの中に入ったまま日常生活を済ませたい。ふたり暮しには必要の無い大きさの炬燵を、尾形がそう言って高給を振りかざし、杉元を黙らせて購入したブツである。
    1116

    recommended works