クラス分け「えっ!?目金君と僕別のクラスなの?!」
「漫画君、僕は外部生です。中学からの在校生である君と一緒のクラスになることはありません」
新入生の教室へと案内する道すがら。何気無いやり取りとして「一緒のクラスになれたらいいねー」というごくありふれた会話を振ったのだが、困惑した様子の目金君から伝えられたのは『外部生と内部生は一年目は別クラスになる』という残酷な話であった。冷静に考えてみれば高校から秋葉名戸学園の生徒になった目金君が内部生と同じクラスになる訳が無かったのだが、萌にとって目金君は余りに身近な存在であった為そのシステムを完全に失念していた。
「そんな…そんな……。僕も外部受験すればよかった……」
「本末転倒じゃ無いですか」
「2年目からは垣根が無くなりますし、来年以降一緒のクラスになれたらいいですね」なんて当たり障りのない慰めを受け、萌は晴れやかな式を前にしているとは思えない程にショボショボと項垂れながら歩みを進めた。
▽
「ううう……折角同じ学校に通っているのに別クラスなんて……」
中等部からの内部生達が集められた教室の一角にて。机に突っ伏しべしょべしょといつまでも同じ事を萌は嘆き続ける。そんな萌の一つ前の席に座り式が始まるのを待っていた『じさくは』こと自作派流は、後ろでずっとぐずぐずし続ける存在を無視しきれず、ため息を吐き後ろを振り返る。
「萌、うるさい。さっきから何ぐずぐずしてるんだ」
「うう、聞いてよ派流。僕達内部生は目金君と同じクラスになれないんだよ……。こんな残酷な話、合っていいと思う?」
「……いや、当然の事だろそれ。そもそも泣く程の話か?」
「泣く程に決まってるだろう!?」
萌はガタリと音を立て、長く突っ伏していた身体を起こし派流に詰め寄る。
「だって派流、目金君だよ?彼のフットワークの軽さを持ってすればクラスメイト全員と仲良くなるなんて容易。ううん、クラスの中心になっているかもしれない」
自分から始めた想像で気が重くなった萌は硬く拳を握り、顔を若干青ざめさせた状態で心中を吐露する。しかし、元秋葉名戸サッカー部員として目金の魅力は十分知っているものの流石にその評価は高過ぎると判断したのであろう派流は眉を顰め、熱に浮かされた萌を冷静に嗜める。
「流石に買い被りすぎじゃないか?」
「いいやそんな事無いよ。きっと彼はクラスの中心人物になる。そうなったりなんかしたら、別のクラスにいる僕の事なんて忘れちゃうんじゃ……!ねえ、派流ー。どうしようー」
「いや知らないが」
「じさくはが冷たい。うう……」
そう言ってまた萌は机に突っ伏し再びべしょべしょと泣き始める。
「……。別のクラスなら」
「?」
「迎えに行けばいいんじゃないか?授業終わりとか、休み時間とか」
派流の提案に萌は呆けた様子で目をパチパチとさせた後、パアッと顔を明るくさせる。
「そうだね、うん。その通りだ!そっかー。迎えに行くって手があったかー」
「解決して良かったな」
「うん!」
派流の助言により悩みが解決した萌はウキウキと声を弾ませていたが、ふと新たに浮上した悩みを恐る恐る派流に投げ掛ける。
「……ねえ、どれくらいのペースなら顔出してもウザくないかな?10分休みも遊びに行ったら流石に引かれちゃう?」
「それくらい自分で考えたらどうだ?」
「そんなあ、ここまできたら最後まで付き合ってよー」
「調子に乗るな。お前そろそろ鬱陶しいぞ」
話は終わったと前を向き直す派流に、薄情な事を言わないでくれと身を乗り出し派流の肩を掴んで駄々を捏ねる萌。そんな二人の攻防は先生が教室にやってくるまで続いた。