眺望する海・春は何回目1年目 眺望する海
寄せては返す波の動きを、門倉と梶はただ見つめていた。
空と海の境では、太陽光がどこまでも途切れない淡い橙色を差し込んでいた。時折、岩崖を削り取るような強い波が打ち付けてきたが、それでも二人は微動だにしなかった。潮の香りがいっそう強くなった。
風が舞い上がり、梶の着古した白いシャツを勢いよく揺らした。咄嗟に目を細め、顔を庇うようにして手を上げると、自身の隣で同じように風に揺れた門倉の黒く長いジャケットが視界の隅に入った。
梶は顔を上げて、上空へ飛び立っていく一機の白いヘリを見た。絶えず耳に入ってくるテールローターが空気を切り裂く音が、強く印象に残る。二人はついさっき、斑目貘と彼に連なる立会人達が、続々とヘリに乗り込んでいく後ろ姿を見たばかりだった。
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