【飯P】ひとさらい 休日にも関わらず、僕は朝から大学の研究室に籠っていた。論文が行き詰まり、もう何週間も休みらしい休みもとれず過ごしている。
季節はすっかり春で、いつの間にか空調を入れる必要もなくなっていた。眠気を誘われそうになり、窓を開けようかと考えたその時、まさにその窓を外から叩く音がする。三階の研究室だ、そんなことが出来る人はそう多くない。僕は早足に窓へ近付いて、鍵を外す。
まさしく、今一番会いたかった人が、ピッコロさんがそこにいた。
「休みの日にまで、ご苦労なことだな」
「嬉しいな、よくここにいるって分かりましたね」
「たまたま上を通ったら、窓からお前が見えた」
中へどうぞ、と促したが、断られる。研究室は狭く、所属する学生がみんな荷物を好き勝手に積んで、まるで物置のようだ。客観的に見て、積極的に入りたい様相ではないし、寛げそうにもなかった。
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