Parallel Blue Chronicle【サンプル】 黒と白の靄が絡み合い、しかし混ざり合うことなくわだかまる空間に、ぼんやりと浮いている。右も左も、上も下もない。歩くか、あるいは泳いでいるのか、手足を動かすことはできるようだが、進んでいるという感覚は一切なかった。
何をすればいいのか、その疑問が頭に浮かんだ瞬間を見計らったかのように、白い靄が明滅した。ほどなく光は一つに収束し、曖昧な形を成す。人のようでもあったが、別の何かにも見えた。白い靄なのか、光なのか、輪郭は溶けてしまいそうに頼りない。
―旅人よ。
それは女性の声であったが、重苦しい厳格さに満ちていた。
―我が問いに答え、あるべき姿を選択せよ。
ひとつ、どのような力を求めるか。
ふたつ、どのような未来を望むか。
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