染岡竜吾はムラムラしていた。なにしろ人並み以上に体力のある成人男性だ、そういうときも大いにある。むしろ今までさほどムラムラを持て余さずにすんでいたのは、いつもはパートナーから誘われることが多いからだ。そう、少年時代には雪原のプリンスと呼ばれていた、あの吹雪士郎である。
「染岡くん、おやすみ」
電気を消した吹雪はにこりと微笑んで染岡の額にキスを落とし、キングサイズのベッドの片側に潜り込んだ。動く気配もなくそのまま寝る体勢になっている。こうしてただ隣で眠るだけの日々が続いているのは、実は染岡が原因だった。
しばらく体調が悪かったのだ。胃腸炎になってしまって。初めての経験に苦しみもがいてだいぶ吹雪を心配させた。それは逆の立場だったら染岡だって言い出しにくい。もうすっかりよくなったからセックスしたいと、自分から申し出たほうがいいのはわかっているが。
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