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    【吹染】染岡くんが頑張って誘ってる

    #吹染
    blowingAndDyeing

    染岡竜吾はムラムラしていた。なにしろ人並み以上に体力のある成人男性だ、そういうときも大いにある。むしろ今までさほどムラムラを持て余さずにすんでいたのは、いつもはパートナーから誘われることが多いからだ。そう、少年時代には雪原のプリンスと呼ばれていた、あの吹雪士郎である。

    「染岡くん、おやすみ」

    電気を消した吹雪はにこりと微笑んで染岡の額にキスを落とし、キングサイズのベッドの片側に潜り込んだ。動く気配もなくそのまま寝る体勢になっている。こうしてただ隣で眠るだけの日々が続いているのは、実は染岡が原因だった。

    しばらく体調が悪かったのだ。胃腸炎になってしまって。初めての経験に苦しみもがいてだいぶ吹雪を心配させた。それは逆の立場だったら染岡だって言い出しにくい。もうすっかりよくなったからセックスしたいと、自分から申し出たほうがいいのはわかっているが。

    (言……えねぇって、んなこと)

    あいにく生来の照れ屋だった。言葉よりは態度で示すほうがまだマシだと思い、染岡はまだ吹雪の呼吸が寝息になっていないタイミングで、こちらに背を向ける彼を後ろからそっと抱きしめた。

    「…………」

    吹雪がみじろぎする。染岡が「吹雪……」と名前を呼ぶと、吹雪は少し間を置いてから、

    「……どうしたの?眠れないの?」

    とささやいた。これで通じるだろうとタカをくくっていた染岡は一瞬慌てたが、吹雪の声にイタズラっぽい響きが混ざっていることに気づき、憮然とした表情になった。

    「お……お前な、わかってんだろ」

    吹雪がくすくすと抑えた声を出しながら、染岡の腕の中でくるりと身体を反転させた。暗闇に慣れた視界でぼんやりと、吹雪が微笑みを浮かべているのがわかる。

    「たまには言葉で聞きたいな。……ダメ?」

    成人男性とは思えぬ愛らしいおねだりだった。染岡はぐぎぎと奥歯を噛み締めてから、観念したように声をしぼりだした。

    「……しようぜ」
    「何を?」
    「セ……ックスだよ!」

    最後はやけくそで、ムードも何もない発言だったはずだけれど。吹雪はうっとりと熱っぽく目を細めて、うん、といううれしそうな吐息とともに、染岡に顔を近づけた。


    おしまい

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