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    Remma_KTG

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    診断メーカーで出たやつ書いてみた。

    蓮魔の長晋のBL本は
    【題】柔い眼
    【帯】物にも人にも執着しない貴方が怖い
    【書き出し】雨に混じるよく知った匂いを気づかれないように吸い込んだ。
    です

    #限界オタクのBL本 #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/878367

    柔い眼 雨に混じるよく知った匂いを気づかれないように吸い込んだ。墓から線香の匂いを連れてきていて、それが妙になじんでいた。
     同じ傘に入る男の肩が濡れている。長可はそっと傘を傾けて彼の体を影に入れたが長い髪はどうしても濡れてしまう。片手で髪を引き寄せて、雑にまとめて肩に載せてやる。長可より背の低い男の表情かおは、前髪で隠れてしまってこちらには見えない。
    「……悪い。片手じゃうまくまとまらねえわ」
    「帰ったら切るんだ、そのままでいい」
     さっきまで他の話をしていた高杉は、一瞬だけこちらに反応をよこしてまた元の話の続きに戻った。駅近のガード下にある特定の条件を満たした時にだけ現れる謎の古本屋があってなかなか手に入らない希少な本を取り扱っているんだとか、金品では売ってくれず他の代価を要求されるんだとか。そんな眉唾な噂話をわくわくした様子ですらすら話す。適当にあいづちを打ちながらほどけてまた雨に濡れ始めた髪をそっと集めた。
     彼の柔らかく美しい薄赤の髪は不恰好に切り刻まれていた。街中で敵対グループに出くわして、通行人がいるのもかまわず相手が斬りかかってきたのだ。間一髪助けに入ってこちらに死人は出なかったが、高杉の髪と三味線が犠牲になった。
    「あの三味線。大事なものだったんじゃねえのか」
    「ああ、うん。まあね。あれはまた購えばいいから」
     髪だって、ここまで伸ばすにはずいぶんとかかっただろうにと言いかけて口をつぐんだ。返ってくる言葉に想像がついたからだ。
     一週間前、懇意にしていたグループが抗争に敗けて崩壊してからというものこの男は失い続きだった。まず住処すみかを焼き払われ、経営していた会社を潰された。お前ならグループが崩壊しないよう手を回せただろうと言えば時間の問題だったと言い、こだわって建てた家だっただろうと言えば手放すのに丁度良かったと言う。会社も畳む「いつか」が今だっただけだと構わなかった。そして昨日、抗争で守りあったはずの仲間に裏切られ、刀を折られて共に行動していた友人を殺された。簡単な葬儀を済ませ、帰る道で既にその友人は話題にすらのぼらない。昨日まで彼相手に話していた話を今度は長可に話すだけだった。
    「たかすぎ」
     弾んだ声で話し続けていた男が振り返る。声は元気だったのにぞっとするほどの無表情に、何を言おうとしたのか忘れてしまった。
    「お前、」
    「傘持たせて悪いな森くん。寒いだろ、早く帰ろう」
     口が、眼が、柔らかい笑顔を作っているのに恐ろしく空虚に見えて、長可は思わず彼を抱き寄せた。少し低めの体温がそこにあるのに、すぐそこで「急に何だよ」と笑う声があるのに、彼が、高杉が、抱きしめた指の間から取りこぼれてしまうようで。
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    DOODLE診断メーカーで出たやつ書いてみた。

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    【題】柔い眼
    【帯】物にも人にも執着しない貴方が怖い
    【書き出し】雨に混じるよく知った匂いを気づかれないように吸い込んだ。
    です

    #限界オタクのBL本 #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/878367
    柔い眼 雨に混じるよく知った匂いを気づかれないように吸い込んだ。墓から線香の匂いを連れてきていて、それが妙になじんでいた。
     同じ傘に入る男の肩が濡れている。長可はそっと傘を傾けて彼の体を影に入れたが長い髪はどうしても濡れてしまう。片手で髪を引き寄せて、雑にまとめて肩に載せてやる。長可より背の低い男の表情かおは、前髪で隠れてしまってこちらには見えない。
    「……悪い。片手じゃうまくまとまらねえわ」
    「帰ったら切るんだ、そのままでいい」
     さっきまで他の話をしていた高杉は、一瞬だけこちらに反応をよこしてまた元の話の続きに戻った。駅近のガード下にある特定の条件を満たした時にだけ現れる謎の古本屋があってなかなか手に入らない希少な本を取り扱っているんだとか、金品では売ってくれず他の代価を要求されるんだとか。そんな眉唾な噂話をわくわくした様子ですらすら話す。適当にあいづちを打ちながらほどけてまた雨に濡れ始めた髪をそっと集めた。
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