Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    hn314

    現在WT

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 15

    hn314

    ☆quiet follow

    モブ視点の二宮組ネタ。二宮組長と右腕の犬飼くんがいます。公式エイプリルフール企画のやつです。
    ⚠️オールキャラ。
    ⚠️不穏な表現しかないです。
    ⚠️二宮がタバコを吸う。

    二宮組ネタ 死を覚悟した瞬間に見るソウマトウってやつがあって、懐かしい記憶が白昼夢みたいによみがえるらしい。
     俺にとってそれははじめて拳銃を渡された日の記憶だった。
     当時俺が所属していた組は三つ巴の抗争に巻き込まれていて、寝ても覚めてもミカド町のどこかで揉め事が起きていた。揉め事が起きれば怪我人が増えるし、怪我人が増えれば敵討するやつも出てくる。こういう負のループや悪循環は一度はじまったら止められない。ミカド町には夏の終わりにひれ伏した蝉みたいに道路のいたるところに血痕が散って、事態を見かねた当時のアニキがオヤジたちには内緒で俺に拳銃を渡したのだ。
     つまり鉄砲玉になって、相手の組のトップを不意打ちでヤッてこい──と。
     鉄砲玉といっても絶対に相打ちになるわけじゃないし、隙をついて撃てば逃げ切れるし、無事に生きて帰って来たら金もシマもやるし幹部にも引き上げる。罪悪感からかそういつになく優しいアニキから説得されたが、俺が拳銃を受け取ったのは手柄を挙げて帰ってきたときの報酬に目がくらんだからじゃなくて、「お前にしか任せられない」と言われたのが嬉しかったからだ。いま振り返ればバカだったなと呆れるし実際にバカだったのだ。オヤジたちに話を通していないのに組から金もシマもポストも与えられるわけがない。ただ当時の俺はバカだったからアニキの話の矛盾に気づかなくて──まあいまの俺も似たようなことをやって死にかけているからあいかわらずバカなのだが──ともかく決死の覚悟で鉄砲玉になりに行ったのだ。
     雨の日だった。夕方みたいに薄暗い明け方。ミカド町のはずれにある廃ビル。昨夜そこに『標的』が入って行ったと報告を受けた俺は、目当ての男がビルから出てくるのを待っていた。ビルの中でなにがおこなわれているかわからないが、バースデイパーティーが開かれているわけじゃないだろう。ヘマをした組員が痛めつけられているか、俺の組以外の敵対組織の組員が痛めつけられているかのどっちかで、ボコボコにされているやつが変わるだけで内容は一緒だ。ただやけに時間がかかっていたから尋問でもしていたのかもしれない。話さなかったら殴られるし話しても結局殴られるやつを。
     ビルの玄関から目当ての男があらわれたとき、雨は小雨に変わっていた。男の最初の印象は「デカいな」という間の抜けたものだった。ミカド町でも目立つくらいの長身で、姿勢が良いから余計に高く見える。ただ筋肉質ではなく細身のインテリっぽい外見で、組対四課からも「あいつを追うときはかならず拳銃を携帯しろ」と危険視されている人物とは思えなかった。身につけている黒いスーツは普通のビジネススーツだし、整った顔は大企業のエリートみたいに涼しげだ。ビルの中で荒っぽいことを終わらせたばかりには見えない。
     男に続いてあらわれた付き人らしい組員が、男が雨に濡れないように黒い傘を差す。その下でスーツのポケットから取り出したタバコに火をつけた男は、ふっと不快そうに煙を吐き出して俺に目を向けた。ずっと俺の不躾な視線に晒されていたのを気づいていたように。
     その瞬間、俺は拳銃を放り投げて逃げ出していた。
     俺が捨てた拳銃がそのあとどうなったのかはわからない。男が拾ったはずだが俺が狙われることはなくて、アニキにもただ失敗して奪われたとだけ告げた。当時所属していた組は抗争で負けて潰されて、俺は新しく入った他の組で似たようなことをやりながら生き延びた。繋いだ命を無駄にするようにろくでもない人生を歩んで、ドブを這いずり回るように暮らしてきたわけだが、あの日、男から逃げ出した俺の判断だけは唯一正しかったと確信している。
     モノクロームの写真から抜け出したような男に拳銃を向けなかったのを。
     なぜなら男の冷たい目に射抜かれたとき、俺はこいつを殺したいんじゃなくて、殺されたいんだと気がついたからだ。

    「最後になにか言い残しておくことはあるか?」

    ──そしていま、俺の望みは叶おうとしている。
     道にへばりついたガムみたいに座り込んだ俺に男が告げる。左手に握った拳銃を俺につきつけたまま。雨のミカド町。ソウマトウで蘇った記憶の中よりすこし歳をとった男が、右手でタバコを吸いながら俺を見下ろす。付き人らしい青年が差した黒い傘の下、男が不味そうにタバコの煙を吐き出した。あいかわらず澄ました顔をしているが、目つきは昔より鋭い。いままで潜り抜けたいくつもの地獄で削ぎ落とされたように。
    「二宮さんも忙しくて命乞いを聞く暇はないから、一言くらいで済ませてもらえると助かるんだけど」
     傘を差した青年が笑みを浮かべて穏やかに言う。が、細められた目は笑っていない。まあ俺がいま所属している組が男の組──二宮組と敵対していて、俺もやりたい放題二宮組のシマを荒らしたから、怒りや殺意をぶつけられるのも当然だろう。まさか組長みずから俺を仕留めにくるとは予想しなかったが。
     さて。最後に言い残しておく言葉か。
     俺がバカなりに頭を振り絞って遺言を考えているあいだも男は涼しげに立っている。モノクロームの写真から抜け出した姿のまま。昔俺に会ったことなんて覚えていないだろうし、俺に向けて拳銃の引き金を引いたあとも俺をヤったことなんてすぐに忘れるだろう。すくなくとも男が死を覚悟した瞬間のソウマトウとしては蘇らないはずだ。絶対に。
     そんなことを思いながら俺は両手を挙げて、男の気が変わって拳銃を下される前に口にした。
    「──あんたに殺されるなら本望だよ」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🌸💖❤💯❤😭👏👏👏😭😭😭❤❤👏💞🙏🙏💴🙏🙏💖👏👏👏👏😭😭👏❤😭😭😭😭😭😭
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    hn314

    PROGRESS太刀川の隣の部屋に住む杉山さん視点の話。このあと防衛任務中の太刀川くんと二宮くんに助けられる杉山さんの話が上手いこといけば5月の新刊に収録されるはずです。
    ⚠️CPは太刀川と二宮の左右なしです。
    第三者視点の話 三門市はのどかで穏やかな街だ。暖かな気候がそうさせるのか朗らかで人のいい県民性で、犯罪発生率は全国でもトップクラスに低い。夜の繁華街を歩いても絡んでくるのはせいぜい不良くらい。反社会的な団体や犯行グループや半グレ的な組織がいる話は聞かなくて、オレオレ詐欺かと思ったら本当にただの間違い電話だった──という笑い話が実際にあるくらいだ(ちなみに俺の母親の実体験だ)。道を歩いていても目にする看板は『警戒区域注意』『優先順位はスマホの通知音より警報音』といったボーダー関連の標語ばかりで、『事故多発』『ひったくり注意』『自転車盗難発生』といった不穏なものは見かけない。だから俺が住んでいる築十二年の木造アパート(1K・一階・洋室八畳・風呂トイレ付き)もオートロックじゃないし監視カメラもついていないが空き巣に入られたことは一度もなくて、鍵をかけずに部屋を出てもなにも盗まれないくらいだ──というのはさすがに俺の実体験ではない。俺の右隣の部屋に住む男子大学生から聞いた話だ。
    7156

    hn314

    PROGRESS特別訓練でくそつよトリオン兵と戦う太刀川と二宮の話(途中)。無事に2月の新刊に収録されてほしいです。
    ※ボーダー幹部をしている20歳組の未来捏造ネタです。
    原稿の進捗 最近入隊したばかりの隊員から加古さんは太刀川さんと二宮さんのどちらとお付き合いしていたんですかって聞かれたのよ。と、加古ちゃんがオレにぼやいたのは同年代飲み会の最中だった。当の太刀川と二宮はふたりで家に帰ったあとで、来馬も呼び出しを受けて鈴鳴支部に戻ったあとで、冷えたつまみとぬるくなった酒のグラスを片手に居酒屋の六人用の席でふたりでサシ飲みをしていたときだ。
    「C級隊員の子たちのあいだで、私と太刀川くんと二宮くんが昔は三角関係だったって噂が流れているみたいなのよねえ」
     向かい合って座る加古ちゃんが内容とはうらはらに他人事のように言う。オレは日本酒を飲みながらおもわずうめいた。予想していたより酒が強かったからじゃなくて、つい最近オレも訓練のあとに隊員から聞かれていたからだ。ただそのとき質問されたのは「加古さんの手料理を取り合って堤さんたちが喧嘩したって噂は本当なんですか?」という、元ネタに尾鰭背びれがついて羽まで生えたようなものだったのだが。もちろん加古ちゃんはオレたちの中の誰とも付き合ったことがないし、誰かと三角関係になったこともないし、手料理──たぶんチャーハンだろう──を避けるために争った記憶はあれど奪い合ったこともない。根も葉もない噂だが、こういった話が広まる理由はオレにも想像がついた。三十手前のオレたちとは違ってまだ十代の隊員は恋愛話に興味があるだろうし、なにより加古ちゃんも太刀川も二宮も目立つのだ。
    11052

    hn314

    DONE恋愛ゲームが上手い太刀川とこれから攻略される二宮の話※左右なしです。
    誕生日おめでとう話 つぎのデートの行き先を水族館にするか遊園地にするか買い物にするかで迷う。手堅いのは水族館だし、この前行ったときにも喜んでくれた場所だが、もう四回目のデートだからそろそろ違うとこにした方がいい気がするんだよな。いつもおなじとこばっか行ってるとマンネリってやつになるし。でも賑やかな場所は好きじゃなさそうだし、遊園地は避けといた方が無難だろう。そういやもうすぐ誕生日だから、プレゼントの下見も兼ねて買い物に誘ってみるのもアリかもしれない。意外と服装に気を使うタイプだし。よし。今回は買い物を選んでみるか。
     俺がポチポチとボタンを操作して『ショッピング』の選択肢を選ぶと、予想は当たったみたいで『そうね。私も欲しい服があるし』とセリフが出て画面いっぱいにハートマークが飛んだ。主人公のパラメーターを最大まで上げないと出会えないキャラだし、やっと会えてからも会話できるようになるまで時間がかかったが、攻略ルートに入ってからは結構好感度が上がりやすい。ツンデレ? じゃない、クーデレ? が売りのキャラだって国近も言っていたし、ガードの硬さからのデレが魅力なんだろう。この調子でいけば来週の誕生日には告白できそうだな。
    4328

    recommended works

    途綺*

    DONE🐑🔮//綺羅星の微睡み

    甘やかされてふわふわしてぼんやり眠くなる話。※実際にある睡眠導入法を軽くアレンジしています。
    「ふーふーちゃんのばか」

    足を抱えて小さく丸まった浮奇の声は、深く潜り込んだベッドの中でくぐもって響いた。ファルガーがドッゴの夜の散歩から帰ってきた直後という、浮奇にとっては有り得ないほど早い時間にベッドへ入っているのは低気圧に負けて痛みを訴える頭のせいだった。

    外の雨が強くなるにつれて突き刺すような痛みが徐々に強くなってきたこめかみをさすりながら眉根を寄せていた浮奇は、見兼ねたファルガーに鎮痛薬を飲むよう促された。当然の対応だとは分かっていたが昼前から痛んでいた頭は疲れ切って正常な思考を保てず、浮奇は鎮痛薬を差し出すファルガーの手を拒否した。ふーふーちゃんが抱きしめてくれれば治るだとか、脳みそを取り出して壁に投げたいだとか、キスして甘やかしてよだとか。とにかく悪態をついた覚えはあるが何を口走ったのか記憶にない。ただ、話を受け流しつつ浮奇の手を引いてキッチンへと向かったファルガーが唐突に顎を掴んできて、優しく重なる唇に安心したのと同時にぬるい水と薬が口内へ流れ込んできたことで浮奇はようやく正気を取り戻した。
    4137