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    hozumiya

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    安室×風見のカフェパロ3

    ##安風

    【ワンドロ】繋ぐもの【目には見えない】「出社したら会社が無くなってた!?」

     あまりない非番の日に、諸伏景光は大学の先輩から急遽呼び出され、公園のベンチに並んで座っていた。呼び出してきた先輩は律儀なタイプで、一月前には必ず予定の確認をしてくるので、当日の誘いにこれは何かあったに違いないと駆け付けたのだ。
     待ち合わせ場所にいた先輩の顔色は真っ青で、どうしたものかと思っていたところ「朝、会社に行ったら会社が無くなっていた」と言われ、その内容があんまりにもあんまりで景光はぴょいんとベンチの上で跳ねてしまった。

    「会社って解散! って散るものでしたっけ!?」

     え? これまで働いてきた給与は支払われるんですか? とか、これから就活するんですか? とか聞きたいことは沢山あったが、今日も当然のようにあると思っていた場所を失ったショックを受けたばかりの人間にそれを言うのは憚られ、景光はうろうろと視線を彷徨わせる。

    「……とりあえず、未払いの給料については支払うよう元社員で働きかけることになっているんだが、一人では受け止めきれなくて連絡してしまった。休みの日にすまない」
    「いやいや、それは全然気にしないでください。先輩が最初の相談相手に俺を選んでくれて光栄です。それに、休みの日も幼馴染の店を手伝ったりして、家でゴロゴロとかいう感じじゃないので」
    「そうか……それなら今日も手伝いがあったんじゃないか?」

     あぁ、そうか、とりあえず何か話していたいんだなと気付いた景光は手元を見つめながら「自分で自分の首を絞めてるやつのフォローを勝手にしてるだけなんで大丈夫ですよ」と笑った。

    「今日は行けないからって言ってきました。それに、俺の先輩の一大事に自分の方を優先しろっていうやつでもないですから」
    「そうか」

     ようやく「ふーっ」と息を吐いて落ち着いてきた様子の先輩を景光は観察する。以前会った時も細かったが、一段とやつれてしまっているようだ。前回会った時、寝に帰るだけで給料をもらっても使う会社にしか行かないから使う機会がないと言っていた記憶がある。実はこのままでは会社に先輩が殺されてしまうのではないかと心配していたのだ。
     このまま別れれば先輩は同業他社へと就職が決まるだろう。そしてまた景光の大切な先輩は命をすり潰しながら働くのだろう。大学の頃はキラキラとしていた先輩の瞳がどんよりと曇っているのを景光は悲しい気持ちで捉えた。

    「しばらくのんびりしてみるのもいいのかもな」

     ぽとんと落とされた言葉に、景光は背筋がぞっとした。この人の糸がぷつんと切れてしまうのではないかと思えてならなかった。景光は手持ちのカードを頭に浮かべる。脳裏には置き去りにしてきた幼馴染が一人でカフェと探偵事務所の切り盛りをしている姿が描き出された。
     きっとこれは目に見えない二人の縁を自分に繋げと言われているに違いない。

    「風見先輩、今の業種とは全く違うんですけど、俺の幼馴染を手伝ってはもらえませんか?」

     なかなか人を信頼できず、景光が手伝わなければなんでも一人でやってしまう幼馴染。彼が先輩を受け入れてくれるかは未知数だが、自分の紹介なら撥ね付けはしないだろうと景光はにっこり笑う。

    「……へ? それって、自分で自分の首を絞めてるっていう?」
    「そうです!」

     それってもしかしてのんびりできないんじゃないか? と風見はまだ見ぬ未来におびえた。
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