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    miyu_hoshiya

    @miyu_hoshiya

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    miyu_hoshiya

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    某文庫小説アンソロへおよばれした際の作品へ加筆修正したもの。
    なので、読んだことある方もいるかも

    ##降風

    【降風】残り物を詰めただけ「作りすぎてしまったから、君に食べて貰えると助かる」

     そう言ってブツリと切られた端末から耳を離し、風見裕也は隣へ鎮座している紙袋を手に取った。中には大小二種類のタッパーが並び、割り箸が添えられている。
     風見は瞬きを数回した後、そっと背後の気配を伺う。既に紙袋の主は立ち去った後のようで、風見はふうとため息を零しながら大きな方のタッパーの蓋を開けた。
     中にはゴロリとした大きめのロールキャベツが三つ詰め込まれており、その半分ほどがオレンジ色のスープに浸っている。

    「昨日はロールキャベツだったのか……」

     これは庁舎へ戻ってからの楽しみにしようと再び蓋を閉めると、風見はベンチから立ち上がった。



     降谷零は早朝から冷蔵庫の前に立ち、「おうし」と気合いを入れると、昨夜のうちに下準備をしておいたロールキャベツと煮卵を取り出した。
     今日の正午前に、降谷には部下である風見と会う予定がある。そのため、彼は余り物のお裾分けを体調管理の意味も込めて風見に行うつもりであった。
     冷たいロールキャベツを耐熱皿へ乗せ、そこへケチャップや塩胡椒の入ったスープの素を加える。軽くラップで蓋をしてから、電子レンジで熱を加えてゆく。
     レンジをせっせと働かせている間に、ツナ缶の中身をまるごとフライパンに入れ、パプリカと共に炒め合わせる。塩胡椒で味を調えたら、レンジでの調理を終えたロールキャベツ共々粗熱を取る。
     プチトマトはヘタを取り、半分に切ってから砂糖と塩をからめた。冷蔵庫から取り出したままにしていた煮卵も半分に切り、箸でつまみやすいようにする。
     諸々の準備を終え、皿の上に並んだそれらを降谷は満足げな顔で眺めた。

    「よし、あとは……タッパーがいるな」

     小さめのタッパーと大きなタッパーを戸棚から取り出し、小さい方へパプリカの炒め物とプチトマトを詰める。大きな方へはロールキャベツと共にスープを入れ、零れないようにしっかりと蓋を閉めた。
     タッパーを開けた時の風見の表情を想像しつつ、落ち合う場所の近くにある店の紙袋へ傾かないように入れる。少し揺すって、安定していることを確かめると降谷は身支度をすべく台所から離れた。
     紙袋を助手席に乗せた降谷は、落ち合う予定の場所から少し離れた駐車場へ車を入れると、歩いて目的地へと向かった。約束の時刻五分前、待ち合わせ場所へ既に腰掛けている部下の姿を見つける。彼が座るものと背中合わせに配置されたベンチへ向かい、通り過ぎ様に今朝作った弁当が入った紙袋を置く。
     降谷はベンチへ座り、一呼吸置いたところで携帯端末を取り出すと耳元へと当てた。

    「もしもし? ああ、僕だ」
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