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    miyu_hoshiya

    @miyu_hoshiya

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    miyu_hoshiya

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    結構です! 降谷さん! に収録していたものとリンクしている作品を同時に掲載してみる。

    某文庫小説アンソロへおよばれした際の作品へ加筆修正したもの。
    なので、読んだことある方もいるかも

    ##降風

    【降風】麦酒の夜に/コンビニエンスストアと麦酒【麦酒の夜に】

    「あ」

     その現象は、降谷が窓辺に寄り、人と連絡をしている時に起きた。目に映る光景に、思わず驚きの声をあげ、回線先の存在も忘れて魅入ってしまう。そんな降谷に、何か起きたのかと、通話の相手――風見が戸惑いを口にした。

    『何か?』

     緊張と疑問に彩られた声に、意識が耳へと戻される。もう一度だけ空を見上げ、降谷はそれに背を向けた。

    「いや、梅雨の月が見えた」

     突然の話題に、降谷が何を伝えようとしているのかを探っているのが、沈黙から伝わってくる。そんな風見の様子に、降谷は口角を上げた。

    「ふっ……いや。こっちは、一日曇り空だったんだ」
    『あっ、なるほど。えー……こちらは五月晴れでした。今は麦星アルクトゥルスが見えますよ』

     伝えられた天気の違いに、風見が今近くにいないことを思い出す。聞いていたはずだが、記憶の片隅に置いていたうえ、連絡をすればすぐ返事がくるものだから、距離をそんなに意識していなかった自分に降谷は呆れる。

    『ビールが飲みたくなる季節になりました』
    「おい、風呂上がりにぐっとやりたくなるようなことを言うな」

     ビールが喉を通り抜ける感覚を思い出し、冷蔵庫を開ける。中にはスポーツドリンクが入っているだけで、目当ての品はない。

    『あれ? 禁酒中でしたか?』
    「そういうわけじゃないが、買い置きしてなかった」

     バタンと冷蔵庫の扉を閉め、その前に座り込む。視界にだらけた裸足が映り込み、拗ねた気分になった降谷は、意味も無く指先をぴこぴこと動かした。

    『それは残念でしたね』

     全くそう思っていない声が聞こえ、降谷は握りしめた携帯端末を横目で睨み付ける。もちろん、見えない相手が堪えるわけもなく、ははという笑い声さえ聞こえてくる始末だ。

    「帰ってきたら覚えていろよ。…………そういえば、お前はクラフトビールを知ってるか?」
    『クラフトビールですか? 聞いたことはありますが、飲んだことはありません。それが何か?』
    「今日、最近人気が上がっていると教えられてな」

     フルーツが入っている物が特に。ビールを苦手に思っていた人にも、飲みやすいと話題らしいと付け加える。降谷は、熱心に身振り手振りまで付けて説明してきた、アルバイト先の女性の姿を思い浮かべた。

    『それでは、それも二人で飲むものに加えておきましょう』
    「そうしてくれ」

     一段落ついたらアルコールの入った酒を飲み交わそうという、二人の約束の厚みはこうして増していく。いったい実現する頃には、どれだけの酒を食卓に並べることになるのだろうかと想像して、降谷は一人未来を夢見るように目を細めた。

    「明日にはこっちに戻ってくるんだったか?」
    『はい。降谷さんは暫くあちらでしたか』

     ようやく立ち上がる気力の出た降谷は、食卓の上へ投げていた財布を手に取ると、尻のポケットへねじ込む。

    「あぁ。僕が留守する間、頼んだぞ」

     降谷はそう告げると、返事も聞かずに回線をぶつりと切る。玄関で靴を履き、傘を手に取るか一瞬悩み、結局愛車の鍵が入ったキーケースだけを手に取ると、外へと脚を踏み出した。


    【コンビニエンスストアと麦酒】

     キーケース片手に外へ飛び出した降谷は、最寄りからは離れたコンビニエンスストアへと車を走らせていた。真夜中とも言える時刻に差し掛かっているにも関わらず、道の上には赤い洋灯が列を作っている。ちらりと上へ目を向ければ、風見から電話越しに伝えられた「麦星アルクトゥルス」が見えた。
     闇の中で輝くそれを打ち消すように、コンビニエンスストアが掲げる看板の強い光が目に入る。降谷はカツンとウィンカーを表示させ、駐車場へと車を滑り込ませた。
     入店時に流れる独特の音楽を耳に入れつつ、降谷は一番奥へ配置されたビールのコーナーへと一直線に向かう。
     なんとなく青いラベルの物を飲みたい気分で、棚の中からそれを選び出しレジへと向かった。未成年か否かの確認ボタンをタッチし、小銭で支払いをした降谷はビニールに包まれたビールを受け取る。
     再び車を走らせ帰宅した降谷は手を洗ってから、コップと共に卓袱台へ缶を置き、その上でプルタブをプシリと開けた。コップへと中身を注げば、明るい黄色が泡と共に弾け、上部へ白い泡の布団を作る。
     ぐいっと一気に煽ると、腹の底へ溜まっていた見えない疲れがはじけ飛ぶ感覚がした。

    「はー……彼奴の言うとおり、本当にビールのいい季節になったな」

     降谷はそのまま後ろへバタリと倒れると、一人ハハと笑った。
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