「暁人、なんだそりゃ、菓子か?」
「違うよ、入浴剤」ホントはバスボムって呼ぶんだけど。
机に置かれたそれからは、たしかに綿菓子のような甘い香りが漂う。
「ほーん、なんかそれ、却って疲れそうだな」
KKはいかにもおじさん臭いことを言いながらなにやらスンスンしている。
「じゃあ一緒に入ってみる?」KKは渋い顔をしているようだが気づかない振りをしてお湯をためた。
バスボムを湯に落とすとシュワシュワと音を立てながら溶け、中から桜の花びらがひらりひらりと広がっていく。
「…どう?」
肩まで浸かったまま湯船に視線を落とす。
水面に映る亡霊はまとわりつく花びらに顔を顰めながら「やっぱり柚子かヒノキだよなぁ」とぼやく。
──桜の木の下には死体が埋められてるんだ
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