花占い「好き、嫌い、好き、嫌い……」
「何やってるんだ」
「あ、先輩」
お昼の時間。珍しく学校に来ていた瑞希は花壇のそばにしゃがみ込み、萎れかけた花の花弁をプチプチとちぎり取っていた。通り掛かったらしい司が空のお弁当箱を手に瑞希の隣にしゃがみ、手元を見つめる。
「花占いか?」
「そだよー。好き、嫌い、好き……あー、嫌いで終わっちゃった」
「奇数の時は好きから、偶数の時は嫌いから始めると好きで終わるらしいぞ」
「そうなんだ。でも一々花弁の数なんて見てないよー」
笑いながら瑞希は花弁の取れたそれをポイと投げ捨て、また新しく萎れかけの花を手に取る。
「先輩もやってみる?」
「類に怒られそうだから辞めておく」
「あー、案外好きだもんね、類」
また、好き嫌いと言いながら花弁をちぎり取っていく。
「……誰のことを想定してやっているんだ?」
「ん? いや、特に相手はいないよ。暇潰しにやってるだけ」
「そうか」
「好き、嫌い、好き……あー、また嫌いだってー。しょげる〜」
「残念だな」
「ね〜。もしかして花に嫌われてたり?」
なんてね、と笑って手元を見つめる。花弁がもがれ無惨な姿の茎が一本、指に回されくるりと回転する。同様の有様な茎と共に地面に散らばる鮮やかな花弁たちが、悲惨さを態々演出しているようにも見えた。
嫌われるのも仕方がないのかもしれない。所詮そういう人間だ。それでもやりたいことをやる。所詮そういう人間だ。
「もう一回やろっかな」
花弁の取れたそれを投げ捨て、また萎れかけの花を摘む。
「オレは暁山のこと好きだぞ」
ぷちりと細い茎が千切れる。
チャイムが鳴る。
スッと立ち上がった司はそのまま校舎の方へ駆け足に去っていく。
花を見つめていた瑞希は、同じように立ち上がり、司を追いかけた。