ゆるし「せんぱーい、写真撮らして!」
「いいぞ!」
「せんぱーい、髪いじらして!」
「いいぞ!」
「せんぱーい、服のアレンジ一緒に考えてよ」
「いいぞ!」
「せんぱーい、面白いポーズとって〜」
「いいぞ!」
いつからか瑞希は、司とよく遊ぶようになっていた。もしくは構ってもらっていたのだろうか。
元々学校に行くのは億劫だったのに、司先輩がいるからと、午後には時折行くようになった。お昼を一緒に食べたり、司の用事がない放課後は一緒に遊んだりした。それでも毎日行くことはなかったけど、時折来ては話しかけてくる瑞希に司は笑顔を見せた。
その日も瑞希は昼過ぎ頃学校へ行き、放課後に校庭の隅のベンチで司と話していた。
「それでも類がやると聞かんから仕方なくだな?! いや、ショーが良くなるなら構わんのだがな……」
「あはは。類も類だけど、先輩も先輩だよね〜」
「どういう意味だ?」
「そのままだよ」
きゃらきゃら笑って抱きついて、勢いのまま寝っ転がって司の太ももに頭を乗せ、膝枕のような状態になる。上を見上げると笑顔があった。
(この距離でもまだ許してくれるんだ)
ふと目に止まった枝毛をいじりながら話す。
「そーだ先輩、今日放課後デートしよーよ。行きたいとこあってさ」
「ダメだ」
「えっ」
見上げた顔は平然としていた。
「今日は練習があるからな、そろそろ行かなければ」
「……そっ、かー……がんばってね」
スッと起き上がって、司の横に並んで座る。拳一つ分ほど、距離がある。
(そっか、デートはダメか)
言葉が上手く出なかったのは、断られるなんて思っていなかったからだ。
(いつからだろう)
いつからか、何を言ったって頷いてくれる人だと無意識に思っていたことに気がついた。
(そんなこと、あるわけないのに)
別に“嫌だ”と言われたわけでもあるまいに、思いもよらない拒否の言葉から瑞希の思考は暗い方へと落ちていく。
(ダメだな、そんなに落ち込むことでもないのに。なんで——)
「ああ。デートはまた今度な」
サラリと告げられたのは“次”の約束。
「……え」
「ん?」
「行ってくれるの? デート」
パチクリと目を見開いて見つめると、彼は微笑んで言う。
「うん? ああ、お前と出かけるのは楽しそうだしな。何処に行きたい?」
その瞳に嘘偽りは無くて。
ともすれば揶揄うような色だったかも知れないけれど。
(……先輩となら何処へでも)
なんて
「そうだなー……」
そんなこと、あるはずがないのだけど