「お前が仮にもKを名乗るなら、子作りくらい経験ねぇのか」
夫婦となる相手のことなら一人も幾度か考えたことがあった。光とされる本来のK一族以上に、Kの存在を途絶えさせぬための影たる一族の方が、世継ぎに関して意識が強かったことだろう。KAZUYAに婚約者がいたように、一人の父が嫁をとって子を為したように、一人も医者として成長した暁には、後継者を得るものだと思っていた。そしてその相手は一人が見出すのではなく、一族によって決められるのだろうとも思っていた。そんな漠然とした未来設計があったからか、学生時代の数少ない女子からの好意も、どこで目をつけられたのかも知れない年上の女性から誘われた火遊びも、まったくノれなかったことが懐かしい。
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