「初めて会った時は、白いお狐様だと思ったのになぁ」
元の白い腕を手首まで綺麗に小麦色に日焼けさせて、軍手を外した指先も以前よりは健康的な色に変わっている。
「孝支も1年もしたら同じ色になるで」
「さすがに10日じゃ無理かぁ」
夏休みのほんの一枠。北くんちの手伝いに来たはいいけど、日に弱い俺の肌はただただ赤く火照るだけ。
「信介、鼻んとこ剥けてる」
気付いて指さすと、「剥いて」「え、痛くない?」「痒い」と、自分の鼻先をんっと突き出してくる。
人差し指の爪の先でそおっと薄皮を引っ掛け、息を詰めて集中しているところへ、北くんの唇が無防備な俺の小指にぱくりと食いつく。
「ふわっ」と俺が驚いた瞬間薄皮が取れて、衝撃に閉じられる北くんの瞳。
「あっごめん」と言う俺の鼻先に自分の鼻先を擦り付け、流れで唇も軽く食まれる。
「…は…え?」
間近で大きな狐の瞳がじっと俺を見詰める。え?今のは?
北くんはふっと笑うと「ナイショやで?」と、鼻を擦って立ち上がった。