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    四 季

    @fourseasongs

    大神、FF6、FF9、ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドが好きな人です。

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    四 季

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    ブレワイ書きかけシリーズその②。『旅路』シリーズ、リバーサイド馬宿です。

     リンクさんは姫に食べさせるために色々な料理を作れるようになって欲しい。
     そしてティアキンの肉丼は、リンクさんのためを想って姫が考案した料理なのではないかと思っています☺️

    #ブレワイ
    brawley

    旅路(リバーサイド馬宿) リバーサイド馬宿は、本日も平和だった。

     リバーサイド馬宿は、その名の通り、ハイリア川のすぐ側にある馬宿だ。そして、ハイリア川より西側は、北にハイラル城が聳えるハイラル平原にあたる。
     そのため、例えばハイラルの東部にあるハテール地方を旅立った旅人が一山当てようとハイラル城を目指そうとした場合、必ず一度はリバーサイド馬宿に立ち寄ることになる。リバーサイド馬宿より先のハイラル平原には、人が宿泊できるような場所がないからだ。
     そして、ハイラル城を目指した旅人のほとんどが、城下町周辺をうろつく数多のガーディアンに恐れをなし、城への立ち入りを諦め、再びリバーサイド馬宿に戻って来ることになる。リバーサイド馬宿は、そんな場所だった。
     だから、リバーサイド馬宿に長くとどまっている旅人も、馬宿に勤める者も、ハイラル城への憧れや、百年前のハイラルへの想いを捨てきれずにこの馬宿に留まっている者が多い。城に勤める騎士の中でも、近衛騎士にのみ扱うことを許された近衛の武器に憧れているという旅人のセリッパ、そして、ハイラル城の宮廷料理人だった祖父を持つ料理人ゴエタフも、そうした者の一人だった。
     ゴエタフは幼い頃、若かりし頃の祖父が、ハイラル城で宮廷料理人として働いていた頃の話を聞いて育った。祖父は料理人、とりわけ城で働く宮廷料理人であったことにとても誇りを抱いていて、大厄災によってハイラル全土が荒廃してからも、いずれ王族の血を受け継ぐ人間が城に戻り、ハイラルが再び在りし日の姿を取り戻すことを願ってやまなかった。
     ゴエタフも一介の料理人として、かつて城で供されていた宮廷料理に興味を持つ人間だった。だが、ガーディアンや数多の魔物が跋扈する城内に侵入し、そこに残っているレシピを調べに行くことなど到底できない。そのため、自分と同じように、馬宿を訪れるハイラル城への夢を捨てきれない旅人に出会っては、宮廷料理のレシピを調べて来てはもらえないかとお願いしていた。
     もちろん、これまで誰一人として、ハイラル城の中へ赴き、帰って来た者はいなかったのだが。

     そんなある日、一人の旅人の青年が、リバーサイド馬宿を訪れた。
     青年は、受付に馬を預けるなり、馬宿に設置されている料理鍋で豪快に料理を始めた。粗末な木の板をまな板代わりに、乱雑に肉や野菜を切って鍋にぶち込んでいるだけの料理だったが、彼が料理に用いていた素材を見て、ゴエタフは目を丸くした。
     一品目は極上ケモノ肉と大マックスラディッシュを使った肉シチュー、二品目にマックスサーモンとタバンタ小麦を使ったサーモンムニエル、三品目は大マックストリュフとハテノ米を使ったキノコリゾット、最後の四品目はマックスドリアンとヒンヤリメロンを使ったデザートのフルーツパイだ。フレッシュミルクやヤギのバター、米に麦は流通しているが、極上ケモノ肉は寒冷地の大型の獣を狩らなければ手に入らないし、マックスサーモンやマックスドリアン、ヒンヤリメロンはハイラル東部にもこの中央ハイラル地方にもない。よほど腕っこきの狩人でもなければ手に入らないような品揃えだ。そもそも、この青年の作った料理は、馬宿でとる旅の食事としてはあまりにも豪勢だった。
     ゴエタフが半分驚き、半分呆れながら見守っている中、青年は一人前とはとても思えないその量の料理をあっという間に一人で全て平らげた。その後で、懐から使い込まれた小さな手帳を取り出し、何事かメモしている。どうやらレシピをまとめ、作った料理についての感想や改善点を書き込んでいるようだった。
     そんな青年の様子を見て、ゴエタフは宮廷料理のレシピを見つけてくれるよう頼んだ。それまでゴエタフが頼んだ幾人かの旅人たちの、「我こそは」という自信に満ち溢れた態度とは真逆の、何のてらいもない気楽な態度で、青年は「ちょうど城に行く用事があったので、いいですよ」と、まるで近所にお使いに行くかのように、ゴエタフが拍子抜けするくらいあっさり承諾したのだった。

     果たして数日後、青年は、ハイラル城から無事生還した。見たところ大きな怪我もないようで、青年に無茶な依頼をしていたゴエタフは、内心胸を撫で下ろした。
     青年はゴエタフの依頼していた宮廷料理のレシピの他にも、セリッパが見たいと言っていた近衛の武器も城から持って来ていた。とはいえ青年曰く「下見」とのことで、まだ彼の、城における用事は終わっていないようだった。
    「そういえば、ゴエタフさんは、色々な料理をご存知なんですよね?」
     城の図書館にあったというレシピをもとに青年が作ったフルーツケーキを食べ終えたゴエタフに、青年が問いかけてくる。ゴエタフはフルーツケーキを味わいながら青年のほうに顔を向けた。
     フルーツケーキはハイラルの姫君の好物だったというだけあって、ハイラル各地のフルーツをふんだんに使っている。作るための技術も必要だが、フルーツを各地から入手するのも一苦労だろう。さすがのゴエタフも、この青年がただの気の良い、料理好きの青年ではないことは察していたが、そんな青年に真剣な顔で見つめられ、ゴエタフは少したじろいだ。
    「え、ええ、まあ、そうですね。とはいえ交通網があまり機能していない今のハイラルでは、なかなか材料を手に入れられず、レシピは知っていても、実際に作ったことのない料理が多いですね。
     宮廷料理はもちろんですが、百年前には庶民の家庭で作られていた晴れの日の料理も、材料の入手が難しくて今では作れないんですよ。マリッタ地方に交易所があった頃には、ヘブラ産のイチゴを使ったクレープや、極上ケモノ肉を使ったシチューが城下町で作られたといいますし、ハイラルの外れにあるハテノ村の人たちも、それらの品物を城下町の交易所で買い求めることができたそうですよ。
     ですが、今では甘味のトウキビはハテノ村まで流通していませんし、逆にハテノウシのフレッシュミルクをハイラル西部まで運ぶ手段がない。私も色々な食材を求めてこのリバーサイド馬宿に来ましたが、ここから先に行くのはさすがに骨が折れます」
     そういうわけですから、あなたが行商人をやれば、随分と儲かるかもしれませんねえと、少しの妬みを込めてゴエタフは付け加えた。
    「なるほど」
     ゴエタフの皮肉めいた言葉に気を悪くしたふうでもなく、青年は真面目な顔で頷いた。
    「ゴエタフさん、一つ提案なんですが」
     青年の妙な気迫に押され、思わず後ずさったゴエタフに、青年が詰め寄った。
    「俺が食材を集めてくるので、あなたの知っている料理のレシピを、俺に教えてくれませんか?」
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    四 季

    DONEリンクが姫様に自分の家を譲ったことに対する自分なりの考えを二次創作にしようという試み。(改題前:『ホームカミング』)
    帰郷「本当に、良いのですか?」
     ゼルダの問いかけに、リンクははっきり頷き、「はい」と言葉少なに肯定の意を示した。
     リンクのその、言葉少ないながらもゼルダの拒絶を認めない、よく言えば毅然とした、悪く言えば頑ななその態度が、百年と少し前の、まだゼルダの騎士だった頃の彼の姿を思い起こさせるので、ゼルダは小さくため息を吐いた。

     ハイラルを救った姫巫女と勇者である二人がそうして真面目な表情で顔を突き合わせているのは、往時の面影もないほど崩れ、朽ち果ててしまったハイラルの城でも、王家ゆかりの地でもなく、ハイラルの東の果てのハイリア人の村・ハテノ村にある、ごくありふれた民家の中だった。
     家の裏手にあるエボニ山の頂で、いつからか育った桜の樹の花の蕾がほころび始め、吹き下ろす風に混じる匂いや、ラネール山を白く染め上げる万年雪の積もり具合から春の兆しを感じたハテノ村の人びとが、芽吹の季節に向けて農作業を始める、ちょうどそんな頃のことだった。ゼルダの知らないうちに旅支度を整えたリンクが、突然、ゼルダにハテノ村の家を譲り、しばらく旅に出かける──そう告げたのは。
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