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    hapipan_o

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    新殺ぐだちゃんになる予定の次元の話。
    新刊に入れる小話候補。土佐弁もなにもかもふわふわしてる。多分書き直す。

    新殺ぐだ♀小話 俺のマスターは変わったお人だ。
     否、変わった人間だから俺のマスターであり続けるのか?
     綺羅星の様な眩しさを湛え、底なし沼の如き懐の広さを見せる。かと思えば意外と沸点は低く直ぐムキになって突っかかってくるし、好奇心旺盛といえば聞こえは良いが与えられるままに何でも口に入れるし、それに加えて私生活は意外とズボラだ。
     マシュと揃ってマスターの歩いた後にぼろぼろ落ちている再臨道具を拾って歩くのは日常茶飯事、寝起きの悪いマスターを叩き起こし朝の身支度を手伝い、昼の戦闘、夜は夜で居眠りコキながら報告書を書くマスターの見張り……いや、意外でも無くズボラだな?!
     兎に角、まあ何と言うか何処かすっぽ抜けているマスターの面倒を見ているのが俺のここでの役割で、従者たる自分の在り方だと自負してる。
     のは、そうなんだが。

    「いや、これは完全に想定外」
    「おー!?なんだ、燕青座れ座れ!面白いから!」
    「なんや、わしの酒が飲めんのか!?お!?」
    「う、うう……!」
    「ーっ!飲むな飲むな!マスター!めっ!!」
    「なんちゃあ、つれないのう」
    「ほーら、マスターお望みの燕青が来たぞ~!ん?ついでに水飲むか?」
    「馬鹿っ!お前それ、酒だろ!!ホント何考えてんの!?」
     消灯時間が過ぎた食堂へマスターを探しに来たら目の前に広がる地獄絵図。すっかり出来上がった荊軻と岡田以蔵に挟まれて机に突っ伏している我らがマスターは何処からどう見ても両隣の酔いどれ共に潰された哀れな姿を晒している。どうして誰も止めなかった!と当たり散らしたいが、運悪く誰も居ない酒盛りに引きずり込まれたマスターが軽い気持ちで呑んでしまったというのか真実だろう。
     やる、このマスターならやる。
     慌てて駆け寄り、マスターの口に突っ込まれそうになっていた水差しを取り上げついでにマスターも抱き上げる。
     日頃見境なく食べているのに何処に消えてんだって程軽い彼女の身体を抱え、酔っ払いどもの伸ばしてくる手を足で払い、行儀は悪いがテーブルの上で睨みを効かせる。がそもそもが正気を失っている存在には露ほども効かない。
    「なんだ、ズルいぞ!独り占めか?」
    「あーあー!なんとでも言え、なにやってんだよホント!」
    「うぇぇ……」
    「!マスター大丈夫かい?気持ち悪い?吐いて良いから」
    「おーおー、お熱いのぉ!飲んでる間も『燕青がいない~』ちゅーて、煩くてかなわんかったからのぅ!」
    「……マスター、こいつらに掛けちゃっていいから。ほら、吐いて!」
    「うえっ!?」
    「うう~~!!」
     腕の中で呻き声を上げるマスターの背を擦り胃の中の物を吐き出すように促すが、とろん、と瞼を落とした彼女は青白い顔のまま被りを振る。どうしようか、いっそ口の中に指でも突っ込んで強制的に吐かせるか。
    「燕青、止めとけ。不穏な事考えてるだろ」
    「どの口が言うかねぇ~!?マスターがぶっ倒れたらあんたらのせいだからな!」
    「そうなのか?マスターが飲みたがっても?」
    「!……いやいやいや、それを止めるのがあんたらだろ!」
    「そうがやないやろぉ、マスターの望みを手伝う、それが英霊やろ」
    「えぇ……?あんた、酒飲んでる方が理性的ってどーなのよ……」
     確かにそれも一理ある。ただ、それは俺の信条に沿っていない。
     酒を飲みたいなら俺に言えばいい、飲みたい時は俺を側に置いておけば良い。どうして一人で……そこまで考えて、薄暗い思いを思考から追い払った。
     違う、そうじゃない。
     抱え直したマスターの顔を覗き込み、視線の合わない彼女に問う。
    「マスタぁ、本当に飲みたかったの?」
    「……ん」
     こくこくと首を縦に振るマスターに深いため息が出る。なんで、どうしては置いておき主の望みを叶えたのが自分じゃない事にも脱力してしまった。
    「マスター、前から言ってるけど怪しい物を口に入れるのはおやめ」
    「怪しくないぞぉ―!」
    「そーじゃそーじゃ!」
    「うるせぇ酔っ払いども!!」
    「ぇんせ……」
    「!どうした!?」
    「……は、」
     吐きそう、と言い放ち口元を抑える彼女を抱え急ぎ食堂を飛び出した。

     翌朝、「飲んだらちょっと大人になれるかと思って」と言い放つ彼女がシーツより白い顔をしたまま、ごめんね、と舌を出して笑う物だから、どうしてやろうかと思った。
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