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    Hyoki

    @hyoki_fgo

    推しカプ書くために尻叩きです

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    Hyoki

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    ソロぐだを書きたかったやつ
    事故レイシフトしちゃった立香ちゃんがソロモンに歌を歌います
    ※ショタモンが出てきます
    ※SEKAI NO OWARIの『すべてが壊れた夜に』『深い森』『不死鳥』『花鳥風月』がイメージになってます

    花鳥風月小さい頃、よく聞いていた歌が脳内で何度も再生される。だいたいこの歌が再生されるのは自分が辛い、不安だと思った時だ。事故で何時かも分からない世界に飛ばされ、乾燥した大地の街に一人。知り合いなんている訳もなく、ただ何もわからないままとぼとぼ歩くしかない。人混みで埃立つ大路を抜け、小さな泉のある方へと歩みを進めた。ここなら人も少ないし状況整理が出来る。何たって寝床に着いて目を閉じたら急にこの世界に飛ばされていたのだ。まずは情報を集めなければいけない。
    立香は脳内に流れる歌を口遊ながら靴を脱いで泉に足を浸す。この国は暑い。カラリとした暑さから地中海周辺、特にその東の方だろうかなんて目安を付ける。今の立香にできることは情報収集しかない。しかし、騒然としているこの都市ではそれも難しかった。戦争中なのかはたまた国内で争いが起きているのか皆慌ただしく歩き回っていた。これでは情報収集どころではないと察知した立香は咄嗟に判断し、街外れの泉へとやってきたのだ。ふと街の方を振り返れば大きな宮殿のようなものが目につく。あれは、なんだろうか。


    「ねぇ、何してるの?」
    「ひゃいっ」


    突然話しかけられて変な声が出る。声の主を確かめようと振り返れば、小さな子供がぽつんと立っていた。白く輝く象牙色の髪に焦げた肌、まるで小麦畑のような金色の瞳が立香の記憶を呼び起こす。あの日、あの時、白亜の神殿で消えた魔術王ソロモン......の幼少期の彼が今目の前に立っている。こちらをじっと見つめてくる瞳は何か欠けているような、そんな眼差しだ。


    「お姉さん、何してるの?」
    「ちょっと旅に疲れちゃってね」
    「ふぅん......それで、ここにいるんだね、嘘つきさん」


    甘い蜂蜜をたっぷりかけた声でそう言ってくる。子供じゃないような素振りで口調でそう私に投げかけてくる。やはり、この子には一筋縄とはいかない。私は参ったというように両手を上げると目の前の少年にこう投げた。


    「そうだよ、ソロモン」
    「私の事、知っているんだね?」
    「未来の貴方のことはよく知ってますよ」


    そう言えば少年は目を細めて微笑んできた。そして両腕を私の前に差し出し「抱け」というかのような雰囲気を作り出す。刹那、恐らく大勢であろう足音が響いてくる。慌ててソロモンを抱き上げると足音が目の前で止まった。


    「ここに居られました......待て、そこの者」
    「落ち着け、この人は私が見定めた者だ。無用な手出しは許さない」
    「!そうでしたか、御無礼を」


    何が起きているのかさっぱり分からないがソロモンに助けられたということは分かった。恐らく、ソロモンを連れ去ろうとした賊か何かと勘違いされたというところだろうか。特に立香の纏う衣服はこの国のものでは無い。ましてや、この時代のものでもないのだ。疑われて当然である。


    「この者を私の部屋まで案内しなさい。異邦の者だから分からないことも多いだろう」
    「承知致しました」


    ソロモンは私の腕からそっと降りると私の手を引き始める。細い腕ながらも振り払えない力の強さに驚きつつも私はソロモンの引かれるままに歩みを進めた。
    着いた先は勿論宮殿だ。街と違って青い芝が生い茂り、木には熟れた果実が実っている。また、小さな水路が道の端に敷かれ、偶に果物が冷やされていた。


    「ん、こっちだよ」


    スタスタと私の腕を引きながら歩いていくソロモン。回廊は大して長くはないはずなのに暑さのせいなのかとてつもなく長く感じる。視界がグラグラしている私の事など歯牙にもかけず、ソロモンは私の腕を引きながら黙々と歩く。しかし、ふと足を止めて私の方を振り返ってきた。


    「大丈夫?お姉さん」
    「うん、ちょっと暑いかな」
    「あともう少しで着くから」


    視界がぼんやりした頃、そんな中でも荘厳な扉は確認できた。ソロモンは相変わらず私の腕を引きながらその部屋に入り込む。風通しのいい、涼しい部屋だった。大きな寝台のようなものが確認できる。天蓋とカーテン付きの女の子が憧れるようなベッドだ。


    「此処で待っていなさい。父上にこの事を伝えてくるから」
    「え...あ、」


    私が引き留めようとした時にはソロモンは従者と共に部屋を後にしてしまっていた。どうしていいのか分からなくなった立香はフラフラと寝台に近づくとそれに縋るように眠り込んでしまった。



    「お姉さん、起きて」
    「んぅ......?」


    気づけば辺りは暗くなっており、小さな燭台に灯る炎だけがこの部屋の明かりになっている。立香はぐるりと寝返りを打とうとしたが打てない。何故か、腹に何かが引っ付いている感覚がする。もふもふとしたそれは何度かスリスリと立香の腹に擦り寄った後、ずりずりと立香の頭上へと上がってきた。


    「起きないなら、水を被せるよ」
    「ひゃい、起きますっ」


    慌てて飛び起きれば目の前にはいつか見たことあるような美少年が一人。寝起きで思考が少し遅れてその美少年をソロモンだと認識した。途端、立香はズルズルと寝台から降り、その場に正座をする。それをソロモンは不思議そうに見つめた後、至極優しい声で立香にこう声をかけた。


    「話があるから、寝台に上がってくれないかい?」
    「いえ、そんな......」
    「君を私の婚約者にすることになったんだ。だから......」


    刹那、立香はフリーズした。婚約者?私が?ソロモンの?有り得る話なんてあるわけが無い。立香は人類最後のマスターという肩書きを外せば単なる女子高生。これといって魔術が使えるわけでもなく、ただ縁に恵まれただけの存在。そんな立香に縁談なぞ、本人からしたら信じたくない現実だった。その上、カルデアに来て美形ばかり眺めたせいか結婚願望がなくなり、彼氏すらできなくともいいと思い始めていた立香にである。


    「いや、私は......」
    「ふむ、でも主のご意向に逆らうことはできないからね。諦めなさい」


    衝撃の一言だった。神様が「ソロモンと立香は結婚するべき」と言ったのだ。これでは歴史が狂ってしまう。本来であればファラオの娘を娶る筈のソロモンがしがない魔術師で平民の立香を娶るのだ。必死に止めようと立香は必死に思考回路をフル回転させるが、何も思いつかずそのまま座り込むしかなかった。


    「おや、どうしたんだい?」
    「私なんかが......なんで......」
    「君の歌、父上が是非聞きたいと仰っただけだよ」


    そんなことをする為に私をソロモンの婚約者にする必要があったのか否かはあの王様のことだからきっとろくでもないことを考えているのだろう。それはさておき、立香は自分の歌が何故気に入られてしまったのかについて気になった。そこまで上手い訳でもなく、この時代の歌でもない。耳にした事の無い旋律で、音階で、歌詞だったから私が抜擢されてしまったのかもしれない。ソロモンが聞いたことの無い歌だったと一言伝えれば気になるのかもしれない。この位の歳でも王位継承の為に父親の宴会には幾度となく参加している筈だ。そこに曲芸師や踊り子、道化師のような盛り上げ役が居ても可笑しくはない。


    「ソロモン、なんで私を婚約者にしたの?」
    「君からは微量でありながら魔力を感じる。それに、君が着けているその腕輪は何処かの魔術師の入れ知恵だろう?しかも、未来の私を知っているときた。ふむ、言葉にするなら魔術師見習いといったところかな?もしかしたらそれ未満かもしれないけれど」


    一気に毒を吐かれた。魔術師見習いどころか未満とまで言うとは相変わらずこの男は子供時代から恐ろしい。が、今のソロモンの発言に立香は疑問を抱いた。腕輪等していただろうか。ソロモンに指摘された腕を見てみると手首の辺りに淡い紫色のブレスレットが一つ。チャームのようなものから綺麗なグラデーションのピンク色の花弁が付いている辺り、犯人は一人しかいない。グランドろくでなしキャスターだ。恐らく、この時代のマナの大気から守っているのだろう。


    「はぁ......分かりました、貴方の婚約者になればいいんでしょう?」
    「その方が君も動きやすいだろう?」


    全て、お見通しのようだ。
    彼は私の膝の上に来ると、私の腕を取って自身の腹に回す。そして浅黒い小さな手で私の手を絡め取り始めた。右手は特に入念に令呪をなぞられる。彼の指先が令呪の縁をなぞる度立香は小さく肩を跳ねさせ、それを見たソロモンは満足そうに立香と手を合わせた。立香よりも小さなその手はされど確実に立香を離すまいと両手で立香の右手を包み込む。子供にしては冷たい肌が立香の右手を包むが、立香の体温はそれに負けまいとその外見に似つかわしくない体温をソロモンへとゆっくり伝えた。


    「ねぇ、歌を歌ってくれないかい?」
    「なんで?」
    「父上に聞かせる歌が酷かったらいけないだろう?」


    少しイラッと来たがすぐに平常心に戻す。この王様は今までよりも厄介な相手。何たってあのゲーティアを振り回すような人だ。平常心を保っていないとすぐに感情が爆発してしまう。


    「分かった」


    ゆっくり息を吸って音と一緒に放出する。一応、ファントムのレッスンやらアマデウスのレッスンやらに付き合わされたから多少はマシになったつもりだ。それに、何を歌うかはもう決めていた。小学生の時からよく聞いていたアーティストにすると。そのアーティストは私が聞いていた頃はケルト風の曲や童話に基づいた曲が主で、私はそんな幻想的な世界観を気に入っている。しかも最近聴き直して、こんな魔術すら出来ない自分を支えてくれるような歌詞ばかりだった為かずっと聴いているのだ。今回選んだのは、知っていることを何も解っていない人に向けての曲だ。知っているのに分からないことばかりの自分たちに向けた曲。


    「ねぇ」
    「何?」
    「それは、なんの曲?」
    「私にとって大切な曲だよ。辛くなった時に聞いてるんだ」
    「ふぅん」


    そう言ってまたふいと違う方向を向いてしまったソロモン。ちょうど良かった、もう間奏に入ってたところだったから。
    立香がそのまま歌い続けているとあっという間に時間は過ぎた。たった数分の事だったがソロモンにとっては深い問いを残したものだった。「知っているけれど分からない」ソロモンにとってこれがなんのことかよく分からない。彼は、神に捧げられた子だったから。


    「うん、上手いと思うよ」
    「本心じゃないでしょ?」
    「私に心なんてない。神に捧げられたんだ、心なんていらない」


    立香は小さく傷を負った



    □□□



    ソロモンの婚約者として過ごす日々は立香が今まで経験したことのないくらい贅沢であった。いつの間にか与えられた部屋は煌びやかな衣装や絨毯、骨董品で飾られ、最早美術館のようになっている。どれも繊細な技術で宝石が埋め込まれていたが、立香はそれに見向きもしなかった。ソロモンは見かけだけでも立香を溺愛しているようにしようとしたがどの努力も立香の前には水の泡と消える。ある日ソロモンが立香に何が欲しいと聞けば「何も要らない」の一点張り。しかし宮殿で立香は浮いてしまった原因はもうひとつある。仕えてくれている者に優しいのだ。「一人でやるから大丈夫」「怪我をしているから手当をしてあげる」兎に角周りに迷惑をかけぬよう、周りに優しく接した立香。それどころか仕事を手伝おうとするものだから周りの者は立香のことを不思議に思った。そして「もしかしたら元々奴隷だったのかもしれない」と噂を立て始めたのだ。しかし、立香とソロモンがそれを否定したことで宮殿に衝撃が走った。ここまで育ちのいい優しい姫は見たことがないと。それは勿論宮殿中どころか国中に広まる訳で、立香を一目見ようとする者まで現れ始めた。そこで仕方なくダビデは言ったのだ。「今度の儀式で立香に聴衆の前で歌を歌ってもらう」と。今度は立香に衝撃が走った。そんなに褒められるような歌声でもないし、この時代の人々が知っているような歌ではない。立香は困り果ててしまった。何を歌えばいいのかと。


    「聴衆の誰もが感心するような曲にするんだよ」


    ダビデに聞いて言われたのはこれだけ。長く考え込んだ後、立香が出した答えは一つ。「異国語にしてしまえば関係ない」だ。ここで使われている言語は古代ヘブライ語。ならば発音も単語も何もかもが違う英語にしてしまえばいいのだ。丁度立香は英語の曲は数曲だけだが知っている。伴奏はダビデに立香の鼻歌から覚えてもらうことにし、ダビデはそれを喜んで受け入れた。「息子の花嫁の為だ、竪琴で伴奏くらいやってやろう」と。


    「はー、緊張する」
    「どんな曲を歌うんだい?」
    「聞いてからのお楽しみということで」


    いざ大衆の前に立つと心臓の鼓動が早くなる。一度深く呼吸をした後、ダビデに演奏の合図を送った。一応、簡単な指揮をしている。と言っても手で太腿を軽く叩いてワルツを刻んでいるだけの話なのだが。
    少し長めの前奏を聞いて立香はその口に音を乗せた。大衆は息を飲んでただ彼女を見つめている。この国の言葉でないどこの言語かも知らない言葉に周りの者は少しざわめいたが、彼女の魅了するような歌声にすぐに感嘆してしまった。ワルツ調で優しく言い聞かせるようなその歌は何処か悲しみを含んでいるようにも聞こえる。それとは反対に曲調は明るく、人々はその矛盾に何処か違和感を覚えた。だが、同時に思うのだ。これが、いいと。
    あっという間に間奏に入った。間奏に入る瞬間はワルツからテンポが変わるから指揮が難しいのだが、上手くダビデが合わせてくれたお陰で上手く入ることが出来た。そして今度は、間奏が終わりほんの少しの余韻の後に再びテンポが変わる。今度は少しゆっくりになるのだ。そこも上手く合わせてくれたダビデには感謝しかない。流石、踊りの才能を竪琴に吸い取られただけある。間奏は琴のソロパートでいい、と伝えていたから原曲よりもかなりアレンジがかかっているがそれもそれで悪くない。彼自身も演奏に熱がかかっているのだろう。なぜならこの曲で唯一のソロパートだから。
    再び歌へと戻ってきた。ラストスパートにかけては少し小さく、ラスサビに向けての力を溜める。そして、ラストスパート。同じ言葉が繰り返されているだけだが、立香の声には大きな力が込められていた。


    □□□


    「眠れないんだ、歌っておくれ」


    彼が王になってからというもののずっとそれだった。幾ら神の子と言えど彼の体は人間。睡眠を取らなければ疲れが溜まって体調を崩してしまう。立香の時代ではちゃんと病院へ行って適切な治療を受ければ早期の回復は可能だが、この時代はそうもいかない。しかし、ソロモンは決して立香無しに寝ようとしなかった。そうして仕方なく女官長は立香を王の部屋まで連れていかなければならなくなったのだ。


    「何を歌えばいいんですか?」
    「なんでもいい。君の歌ならなんでもいいんだ」


    なんでもいい、それが一番困る。それに彼は一度聴いた曲は必ず覚えているらしく、同じ曲を歌おうとすれば「違う」と一言零すのだ。これ以上、何があるだろうか。童話からJPOP、洋楽と様々な曲を歌ったは良いもののソロモンが毎日呼ぶものだからレパートリーがそろそろ尽きそうなのだ。立香は必死に何の曲を歌っていないか思い出そうとしたが思い出せず、ため息をつきながらソロモンのほうを向いた。


    「ねぇ、もう思い出せないよ」
    「へぇ、なら恋愛ものは?」


    それを聞いて立香は一つの曲が頭の中を駆けた。そういえばあまり恋愛ものの曲は歌っていなかった。今のソロモンに聞かせるには少し幼稚と思われるかもしれないがそれはそれ。二人だけの世界で一つ深く息を吸うと音ともに言葉を紡いだ。
    この曲は人間である主人公と非人間で不老不死の主人公の恋人の曲だ。いつか終わる命といつまでも終わらない命の間で葛藤する二人を掛け合いのように歌っている。主人公は永遠を望み、恋人と一生一緒に居たがっているが、恋人は死を望んでいる。終わりのないものは始まりなんてない、恋人が言うこの歌詞が心にぐさりと刺さるものがある。もしも、あの運命にまた出会えることがあるのならこの曲を歌ってやりたいぐらいだ。恐らくその時の彼であれば「そうだな」と一言残して消えるだろう。


    「死がくれる世にも美しい魔法......」
    「うん。死があるからこそ今が美しく映ると私は思うよ」
    「君の目は美しいね」


    歌い終わり、ソロモンはそう言って立香の頬に手を添える。


    □□□


    ソロモンに監禁されて数ヶ月が過ぎた。彼の部屋を出ようにも、厳重に結界が張られた状態ではそれも叶わず、窓から見ることの出来る風景をただ眺めることしか出来ない。それに彼が帰ってくればいつものように歌を求められる。そのせいで宮殿では「夜のカナリア」と呼ばれるようになってしまった。
    今日も夜の帳が降りる。立香は廊下からやってくる明かりを確認すると、ふと天を仰いだ。夏の夜空を彩る多くの星々。ギリシャのサーヴァント達からレクチャーを受けたお陰で星座も物語もすぐに思い出せる。初めて星座の授業になった時必死になって星座の形から星の名前、物語等様々なことを覚えたことが懐かしく思える。


    「いつから、夜空の星の光に気づかなくなったんだろう」


    刹那、入口に張られた天幕からソロモンが顔を出す。いつもより疲れきっている顔を確認した立香はそっとソロモンに近寄ると、その腕を引いて元いた寝台にソロモンを横たわらせた。
    対してソロモンは、立香の存在を寝台の上でやっと確認したのか、彼女の手を取ると指を絡めてもう一方の腕で立香にぎゅうと抱きついた。


    「今日もお疲れですね」
    「君に聞こうと思っていたことがあったのに、思い出せないんだ。私は何か忘れていたかい?」
    「いいや、何も」


    夏にしては冷たい風が窓の外から吹き抜けてくる。
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    Hyoki

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    ※SEKAI NO OWARIの『すべてが壊れた夜に』『深い森』『不死鳥』『花鳥風月』がイメージになってます
    花鳥風月小さい頃、よく聞いていた歌が脳内で何度も再生される。だいたいこの歌が再生されるのは自分が辛い、不安だと思った時だ。事故で何時かも分からない世界に飛ばされ、乾燥した大地の街に一人。知り合いなんている訳もなく、ただ何もわからないままとぼとぼ歩くしかない。人混みで埃立つ大路を抜け、小さな泉のある方へと歩みを進めた。ここなら人も少ないし状況整理が出来る。何たって寝床に着いて目を閉じたら急にこの世界に飛ばされていたのだ。まずは情報を集めなければいけない。
    立香は脳内に流れる歌を口遊ながら靴を脱いで泉に足を浸す。この国は暑い。カラリとした暑さから地中海周辺、特にその東の方だろうかなんて目安を付ける。今の立香にできることは情報収集しかない。しかし、騒然としているこの都市ではそれも難しかった。戦争中なのかはたまた国内で争いが起きているのか皆慌ただしく歩き回っていた。これでは情報収集どころではないと察知した立香は咄嗟に判断し、街外れの泉へとやってきたのだ。ふと街の方を振り返れば大きな宮殿のようなものが目につく。あれは、なんだろうか。
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    Hyoki

    MOURNING書いたはいいけど受験期に入っていくので終わりまで書けませんでした!ごめんなさい!
    ソロぐだの現パロでございます
    旅路家の間を、田畑の間を、山の間を電車は駆け抜けていく。コロコロと変わっていく景色を見て立香はふとため息をついた。何故改札もないような駅を通る電車に一人乗っているか、その答えは簡単である。立香の夏休みを大切な人と過ごす時間で潰すためだ。しかし、立香も華の女子高生。友達からの勧誘を全て断ってまで行くところなのかと聞かれたらそういうわけでもないかもしれない。だが、彼が人の目を避けて過ごしたいというのだから仕方ないのだ。彼とは夏休みの間しかゆっくり過ごすことが出来ない。
    次々と降りていく乗客を横目に見つつ立香は彼に想いを馳せる。自分が小さな頃、孤独から救い出し、未だ家族の名も顔も知らぬ立香を見守り続けてくれている人。立香はそんな彼のことが好きだった、『だった』のだ。その気持ちが分からなくなったのはつい最近のこと。立香の好意が殆ど初恋に近かった頃、彼が見知らぬ美人の女性と楽しそうに歩いているのを友達と見つけてしまったのだ。普段、彼は仕事で忙しく、家で一緒に居る時間は年間を通して夏休みを除くとゼロに等しい立香。立香はそんな彼に対して強い憤りを感じた。もしかして、彼が自分に構ってくれないのは、一緒に居てくれないのはこうして遊んでいるからではないかと。その日は友達と遊ぶ日だった為、知らないふりをしてその場を去ったが、夜に立香は泣き崩れてしまった。どうせ、こんな普遍的な自分よりも美人の方が好きなんだ、そう決めつけて。
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