君と一緒に…
好きの二文字さえ言えない意気地無しは、君を自身に依存させることを選んだ。いじめられる君に、僕が手を差し伸べる。僕しか信じられなくなったら、僕と君、二人の世界だ。妙案に顔が緩んだ。
机に置かれた花瓶。その意味が分からない君でもないのに。辛くなった君は僕を頼ってくれると思った。『たすけて』たった四文字が聞きたかった。ただそれだけ。それだけで僕は救われる。なのに、君は平気な顔をして過ごすから、いじめはエスカレートする。クラスメイトも年頃だから、少し唆したらまんまとやってくれちゃって。嫌がる声と響く悲鳴が青空に消えていくのを隣の教室で聞いていた。
帰り道の踏切。線路の上で君は立ち止まる。カンカンっていう音と一緒に降りる遮断機が僕と君の境界線みたい。どうしたのって、何してるのって、言っても君は笑うばっかり。君の手を引かないといけないのに、電車の近づく音と警報機の音、蝉の声が頭でガンガン鳴り響いて、僕の思考をダメにする。一緒に死ねば二人きりの世界かもってひどい妄想をさせる。
次に見えたのは視界いっぱいの君の顔で。横からの衝撃に脳が揺れる。
「君が友達で良かった」
君の声がスローモーションの世界に落ちていった。
お揃いのキーホルダーも千切れちゃって、今の僕達みたいだね。それがどうしょうもなく憎くて、
「I hardly even know'er」
なんて皮肉を呟いても君には届かない。
それでも、君を諦めきれなくて、僕に気付いてこっちに来てほしくて。
踏切に佇む透明な僕は、君を指差す。