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    おはぎ

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    おはぎ

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    夏五と秋の小話です。
    冬が見えてきた短い秋を楽しんでほしいなぁ

    #夏五
    GeGo

    たきび「あ、山茶花だ」
    「あ?」
     簡単な任務帰り。補助監督の車を帰らせて歩く道すがら、傑が垣根に咲いた花に目をやる。濃いピンク色をしたその花は、流石の俺でも見覚えがあった。
    「いや、それ椿だろ?」
    「ううん、時期的に椿は早いし、それにほら、花びら」
     傑が指す方向を見ると、俺たちの足元に綺麗な花びらがちらほら落ちていた。
    「椿は花ごとぼとりと落ちるけど、山茶花は花びらが散るんだよ」
    「ふーん」
     花はすごく似てるけどね、と言いながらまた歩き出す。傑は何かとカッコつけだし、普段からこんなのは常識だーとか、こうするのが当たり前だーとか、色々と口煩く俺にモノを教えてくるけれど、今のはそーゆーのとは違う感じがした。

     何というか、大事なものを、思い出した感じ。

    「なぁ、何でそんな事知ってんの」
    「え? あぁ、山茶花と椿の違い?」
     まだその話続いてたのか、そう言いたげな顔で傑が俺を見る。たぶん珍しく俺がこの手の話に食いついたから不思議に思ったんだろう。少しわざとらしく考えた後「昔ね、」と傑が口を開いた。
    「……慕っていた女性が教えてくれたんだ。あれから、山茶花を見る度に思い出してしまうんだよ。忘れもしない……あの……」
    「……あの?」
    憂う様に伏せられた瞼に、ごくりとつばを飲み込む。


    「焼きたてホクホクの焼き芋の味が……っ!」


    拳を固く握りしめた傑の目には、気のせいかうっすら涙すら滲んでいた。

    「悟も食べたことくらいあるだろう? 落ち葉掃除した後に焚き火の中で焼くあの焼き芋を。お店で焼いた方が美味しい筈なのに、なんなら少し煤がついたあの焼き芋の美味しさとわくわく感。あの瞬間のために掃除をしていたといっても過言じゃあない」
    「いや急にめっちゃ語るじゃん。つーか何で山茶花から焼き芋?」
    「悟、"たきび"って歌知らない? サザンカサザンカ咲いた道〜ってやつ」
    「知らねー」
     つか、歌があったとして、んなのは今どうでもよくて。さっきのあれは何なんだよ。
    「お前さっき"慕っていた女性が"とか言ってなかった?」
    「あぁ、小学生のころ担任だった横田先生だね。彼女が私に初めて焚き火焼き芋の楽しさを教え込んだのさ」
    「担任のこと彼女って言うなよ。お前が言うといかがわしいわ、なんか」
    「それはただの偏見だろうが」
     別に三人称としては普通だろう、とぶつくさ言う傑を無視して記憶を辿る。確かに家のやつが裏庭で落ち葉を燃やしていたことはあったかもしれない……。けど、俺は。
    「んなのやったことねーし」
    「え、嘘! 学校の掃除の時とかやらなかった?」
    「俺、ガッコーとか、高専が初めてだし」
     生まれた瞬間から命を狙われまくっている俺が普通の幼少期など送れるはずもなく(別に送りたいとも思ってないけど)勉強は家庭教師が付いていたし、五条家での俺の立場を考えたら、掃除なんて生まれてこの方自分でやるなんて考えたこともなかった。
    「…悟、それは人生損してるよ」
     俺の両肩に手を置いて、全力で俺を憐れむ傑の顔がずいっ、と寄ってくる。いやちけーし。
    「人生って、おおげさ、」
    「いーやしてるね。人生半分損してる」
    「焼き芋ぐらいで言い過ぎだって。お前の人生どうなってんだよ」
     残りの半分、炒飯とかで出来てるだろ絶対。
    「よし、今日やろう。スーパー寄って、さつま芋買って帰ろ」
     硝子に何か他にいるか聞こう、と徐に電話をかけはじめる。こいつ本当たまにすげー行動力発揮すんだよな。
    「……あ、もしもし硝子? これから帰ってさ、焚き火で焼き芋やろうと思うんだけど、何かいる? うん、うん、えーあるかな、うん一応探してみる。あ、アルミホイルあった?」
     硝子と電話越しに相談する傑の声から"タキビヤキイモ"を想像する。え、何でアルミホイルいるの、焼き芋って石で焼くんじゃないの、皿とか? え、全然わかんねー。
    「硝子がつまみにするから銀杏あったら買ってきてって。殻付き。それ以外になんか悟やりたいのある?」
    「え、え、な、なんか甘いやつないの」
    「んー焼き芋も甘いけど……あ、じゃあマシュマロ焼くのは? あれも結構上手いよ」
    「マシュマロって焼くの!」
    「うん、焼くとさトロッとして、表面が少し焦げたりしても美味いんだよ」
    「え、絶対やる!」
    「よし、海外のデカいやつ探そう」
     そうと決まればのんびり歩いてる暇はない。小走りで高専最寄りのスーパーへと急ぐ。だんだんと互いのペースに合わせて歩調が速くなり、最後はほぼ全力で走っていた。それも爆笑しながら。

     その後高専に戻った俺たちは、敷地内に腐るほどある落ち葉を拾い集めて火をつけ"焚き火焼き芋"を堪能した。(夜蛾先生には、急に敷地内の掃除がしたいと道具を借りに行って不審がられたし、勝手に焚き火したからフツーに怒られた)
     焚き火で焼いた焼き芋は、火加減なんてできないから所々硬いし、あんまり甘くもなかったけれど、傑と硝子と一緒に食べたあの焼き芋は特別な味がした。


    ◇◇◇


    「あ、山茶花だ」
    「え、これツバキ? じゃないん?」
    「チッチッチ、甘いね悠仁クン。足元を見たまえ! 花びらが散っているだろう? これは椿ではなく山茶花の証なのだよ!」
    「先生急に豆知識披露してくるじゃん」
    「どうせ誰かの受け売りでしょ」
    「この人が花に関する知識なんて持ってる訳ない」
    「二人ともすんごい僕に冷たくない?」
     一年生の引率帰り、おやつを食べに行く途中の道で山茶花の花を見つけた。確か、初めて知ったあの時もこのくらいの時期だったっけ。
    「もう一つ豆知識をいうとね、焚き火の中に銀杏そのまま突っ込んじゃダメだよ。あれ、凶器と化すから」
     悪魔のような同級生に「五条、銀杏焼けたか見てよ」と覗き込まされた時の光景を、今でもありありと思い出せる。僕が無下限使えてなかったら普通に事故だからね、あれ。硝子は自分が治せば怪我させてもいいって思ってる所あるよね。
    「先生ってたまに変に詳しい豆知識持ってるよな」
    「僕の周りに変なことばっか教える奴しかいなかったんじゃない?」
     あの正論野郎のおかげかな、と高くなった空を見上げる。お前に教え込まれたあの味が、僕は忘れられなくなったよ。
     フッ……とアンニュイな雰囲気で微笑む僕に、悠仁が声をかける。





    「いや、それどうせ夏油先生の事だろ? たった三日出張行ってるだけじゃん。そんなアンニュイな空気出されても」
    「たった三日じゃないもん‼︎ されど三日の方だもん‼︎ それなのにアイツ全然連絡してこないんだよ⁉︎ 酷すぎ!」
     信じらんないよ! とプリプリ(自慢じゃないけど結構可愛い)する僕を冷め切った目で見る二人と、まぁまぁと宥める悠仁。え、二人はさ、感情どっかに落っことしてきた?
    「今日帰ってくるんでしょ? 早くおやつ食べてさ、高専戻ろうよ。あ、夏油先生にもなんか買ってってあげたら?」
     悠仁が僕の機嫌を戻そうとフォローする。んーお土産ねぇ……。
    「よし、じゃあさつま芋買って帰ろ、生の」
    「生なん? 焼き芋じゃなくて?」
    「山茶花と言えば、焚き火DE焼き芋でしょーよ! マシュマロも買ってくわよっ!」
    「あ、じゃあ私スモアやりたい! スモア!」
    「それ焚き火で出来んのか?」
    「五条先生にまっかせなさーい!」
     よし、そうと決まればスーパーまで走るよ! と三人を置き去りにして駆け出す。「僕に勝てたら何でも好きなもの買ってあげるよ〜」と言えば、任務終わりの身体に鞭打って追いかけてきた。そうこなくっちゃね。

     あぁ〜早く傑と焼き芋食べたいな〜!
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    🍁🍂🍠😍💖💖😍👏
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    Replies from the creator

    おはぎ

    DONE呪宴2の展示作品です。

    以前ポイしたお宅訪問のお話のワクワク!夏油家お宅訪問~!Verです。
    いつも通り180%捏造ですが、幸せになって欲しい気持ちは本物を詰めてます。
    傑さんや、君にこれだけは言っておきたい!!

    ▼特に以下捏造が含まれます
    ・教師if
    ・夏油、五条家メンバ(両親、兄妹、ばあや、その他)
    ・五条、夏油両実家に関する事柄(所在地から全て)

    上記楽しめる方は宜しくお願いします!
    恋人宣言「ねぇ傑、スーツと袴、どっちがいいかな?」
     コンコン、と開いた扉をノックしながら悟が声をかけて来る。明日の任務に関する資料に目を通していたからか、一瞬反応が遅れる。え、なんて?
    「ごめん、上手く聞き取れなくて。なに?」
    「だから、スーツと袴、どっちがいいかなって。今度実家寄ってくるとき用意お願いしてこようと思ってるから、早めに決めとかないとね」
     今日の昼何食べるかーとか、どっちのケーキにするかーとか、悟は昔から私に小さな判断を任せてくることがよくあった。自分で決めなと何度も言っているのだが悟の変な甘え癖は今も治っていない。だが、服装を聞いてくることは珍しい。(何でも、私のセンスは信用できないらしい。あのカッコよさが分からない方が不思議だ)しかも、選択肢はばっちり正装ときた。何か家の行事に出るのだろうか。それか結婚式とか?
    29607

    おはぎ

    DONEGGD.NYP2の展示作品です。

    以前冒頭を少しポイしていた作品をお正月仕様に少し手を入れて完成させました!
    ドキドキ!五条家お宅訪問~!なお話です。
    180%捏造ですが、幸せになって欲しい気持ちだけは本物を詰め込みました。

    ▼特に以下捏造が含まれます
    ・教師if
    ・五条家メンバ(悟両親、ばあや、その他)
    ・五条、夏油両実家に関する事柄(所在地から全て)

    上記楽しめる方は宜しくお願いします!
    猛獣使いを逃がすな「……本当に大丈夫なのか?」
    「だーいじょうぶだってば! 何緊張してんの」
    「普通緊張するだろう! 恋人の実家にご挨拶に行くんだぞ!」
     強張った身体をほぐそうと悟が私の肩を掴んでふるふると揺すった。普段なら制止するところだが、今はじっと目を閉じて身体をゆだねていた。されるがままの私を悟が大口開けて笑っているが、もはや今の私にとってはどうでもいい。この胃から喉元までせり上がってくるような緊張感を拭ってくれるものならば、藁でも猫でも悟でも、何でも縋って鷲掴みたい。現実逃避をやめて、大きく深呼吸。一気に息を吸い過ぎて咳き込んだが、緊張感が口からこぼれ出てはくれなかった。
    「はぁ……帰りたい……高専の寮で一人スウェットを着て、日がな一日だらだらしたい……」
    27404

    おはぎ

    DONEWebイベ展示作品③
    テーマは「くるみ割り人形」 現パロ?
    彫刻と白鳥――パシンッ
     頬を打つ乾いた音がスタジオに響く。張りつめた空気に触れないよう周囲に控えたダンサーたちは固唾を飲んでその行方を見守った。
     水を打ったように静まり返る中、良く通る深い響きを持った声が鼓膜を震わせる。

    「君、その程度で本当にプリンシパルなの?」

     その台詞に周囲は息をのんだ。かの有名なサトル・ゴジョウにあそこまで言われたら並みのダンサーなら誰もが逃亡しただろう。しかし、彼は静かに立ち上がるとスッと背筋を伸ばしてその視線を受け止めた。

    「はい、私がここのプリンシパルです」

     あの鋭い視線を受け止めてもなお、一歩も引くことなく堂々と返すその背中には、静かな怒りが佇んでいた。
     日本人離れしたすらりと長い手足と儚く煌びやかなその容姿から『踊る彫刻』の異名で知られるトップダンサーがサトル・ゴジョウその人だった。今回の公演では不慮の事故による怪我で主役の座を明け渡すことになり、代役として白羽の矢がたったのが新進気鋭のダンサー、スグル・ゲトーである。黒々とした艶やかな黒髪と大きく身体を使ったダイナミックなパフォーマンスから『アジアのブラックスワン』と呼ばれる彼もまた、近年トップダンサーの仲間入りを果たした若きスターである。
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    「これだから、お坊っちゃまは。口の聞き方も知らないのかい?」
     と、売り言葉に買い言葉、挙げ句の果てに大喧嘩になって、教室を半壊させて大騒ぎになった。で、早速初日から夜蛾先生にがっつり怒られた。もちろんしばらくお互いに口もきかなかった。
     
    「なのに、なんで一緒にいるかねー。」
     校舎の屋上で、硝子が煙草片手に俺を見上げる。昼休みに決まって喫煙している二人を見つけてからは、置いてかれないように、もしくは先回りしてここに来る。右手側に傑、左手側に硝子、真ん中に俺、が定位置となっていた。
    「ほんとだよ。煙草臭いの嫌だー、とか言うくせに 1972