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    バジル

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    バジル

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    学パロ🟡🟣
    悔しくて泣いちゃう🔮

    サニーが忘れ物に気づき自分の教室へと戻ったのは大方の生徒が帰路に就いているか、部活を熱心にやっている頃だった。2階の1番奥の教室、夕方とはいえ蒸し暑い今教室までの道のりはサニーにとても遠く感じさせた。
    汗を垂らしながらサニーは扉を開ける。少しずつ扉を開ける音にサニーの口から零れた声が続く。誰もいないと思っていた教室には1人背を丸めてノートを広げている浮奇がいた。浮奇ヴィオレタ、圧倒的なビジュアルで密かに校内で人気を博している。端正な顔立ちはどこか儚げだが友人の前ではよく笑っているそう。というのもサニーは浮奇と会話をしたこともなければ目を合わせたことも無い。同じクラスとはいえど未だ交流は無い。サニーはそんな浮奇が1人残っている事実に驚き、更に浮奇が鼻をすするっている事実に声を出したのだった。
    そんなサニーに気づかない訳もなく浮奇は音の出処を向いた。その目からは涙が流れ唇はきゅっと結ばれ、眉は困惑の形を浮かべていた。互いをよく知らない2人の間には沈黙が流れた。サニーはどうしたらいいのか分からずとりあえずというように扉を閉めた。
    「えっと、あ、ごめん。忘れ物取りに来たんだ」
    サニーが振り絞って出した言葉は最初に声が裏返っていた。その事に浮奇は結んでいた唇を緩ませた。そしてばつが悪いようにサニーから顔を逸らした。
    しかし、サニーの席は浮奇よりも前の為に浮奇が顔を逸らした意味はなくそのままサニーは横を通って行った。浮奇の机に広げられたノートとプリントを見れば数日前に行われた数学の小テストだということにサニーは気づいた。数学をやっていて涙が出ることがあるのだろうかとサニーは思いながら自分の机の中からファイルを取り出した。それをバッグに入れれば前の扉から出ようと全身する。はずだったのだが、それは浮奇によって止められた。
    「あのさ、数学って分かる?」
    若干震えた声で浮奇はそう尋ねた。
    「ある程度なら分かるけど…」
    浮奇の方に振り向きサニーはそう答えた。次に続く言葉なんて分かっているというようにサニーは浮奇の机に近づき、前の席に腰を落とした。
    「そこ?」
    紫のシャープペンシルの跡が濃く残っている問題が1問だけあった。その問題を指さしながら問うサニーに浮奇はこくりと頷いた。そこは、とサニーが説明をしていく。テストがあった日に分からないと泣きついてきた友人にも教えてと同じように浮奇に説明を続けていく。
    「だから答えはこうなる」
    サニーは最後にそうくくり浮奇の顔を覗くと再び浮奇の顔は歪んでいた。シャープペンシルを握る手には力が入り左右で色の違う瞳からは今にも涙が零れそうなほどたまっていた。サニーがどうしようかと手を動かしていればごめんと小さくつぶやく声が聞こえた。
    「これは、違くて」
    そう言った浮奇は遂に涙を零した。溢れる涙を自身の手で拭いながら悔しくてと口にする。その言葉を聞いた瞬間サニーは理解した。この世界の宝のようの美しいクラスメイトはとてつもなく負けず嫌いなのだと。普段授業をサボりがちな浮奇は数日前にも休んでいた記憶がサニーにはあった。それで居残りをさせられて授業も出ていなかったから分からない、それが嫌で涙を流してしまったというところだろうか。サニーは浮奇の頬に手を添えて涙を拭う。
    「もう1回やろうか」
    サニーのその言葉に浮奇はまた涙を流した。悔しいのか恥ずかしいのか、それは浮奇にしか分からない。
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    バジル

    MAIKING田舎🟡🟣
    じぶんへのいましめチュートリアル
    2ヶ月
    五月蝿いくらいの蝉の鳴き声が響き渡る広大な空は片田舎のこの町にはお似合いで、いつもより暑いこの日は8月の最高気温を更新した。その事もあり、サニーの部活はいつもより早く終わっていた。空いっぱいから零れてくる太陽の光は、サニーにも暑さを及ぼし、汗を吐き出させていた。帰路にある見なれた扉をサニーは開ける。扉を開けると大凡の距離感は親戚と言ってもいいほどに親しい老人がいる。人口の多いとも少ないとも言えないこの町にある古いお弁当屋さん。田舎ならではの大ボリューム、低価格の弁当は育ち盛りで学生のサニーにとってはうってつけの店だった。加えて店主も気前がよく、ことある毎にサニーにサービスと言い惣菜をおまけしてくれたり商品の割引をしてくれたりをしてくれていた。その事もあってか、いつからか部活の練習が午前のみの場合はこの店で 弁当を買ってから帰るというのが習慣になっていた。今日もその例に過ぎず何を食べようかと思いながらサニーは扉を開けたのだった。だが、いつもいる店主はおらず、代わりに座っているのはどこかの国の美術館に飾られている人形のような人間だった。扉を開けた時に伏せられていた目は入店のベルの音と共にゆっくりとサニーへ向けられた。非常に整った顔立ちの男は、まるで窓から入ってきた風を追うかのように何一つ変わらない表情でいた。実際は1秒も経っていないであろう時間は、サニーにとってはとても長く感じるものだった。この不可思議な時間の沈黙を破ったのはサニーではなかった。
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